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ドライブ・マイ・カーのサンのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.2
この映画が醸し出す静かで冷たい中に人肌くらいの温かいものがぼんやりとある感じが好きだ。心地いい。出てくる言葉、場所、景色全ていい。特に瀬戸内の景色は本当に好き。そして村上春樹の洗練された雰囲気が損なわれていない。

詳しく↓
女のいない男たちという村上春の短編が原作となっているときいて、小池さんとずっと心待ちにしていた映画
蓋をあけてみると、他の短編の要素やチェーホフの演劇、滝口監督の演劇論も組み込まれていて原作の影は薄まり、壮大なテーマが入り混じった内容だった
でもそれが化学反応を起こしてうまくまとまっていて
なにより嬉しかったのは僕が文章を読んで感じた村上春樹の洗練された雰囲気は損なわれてなかった
この映画が醸し出す静かで冷たいなかに人肌くらいの温かいものがぼんやりとある感じが好きやった、心地よかった出てくる言葉、場所、景色全ていいね
舞台の瀬戸内、ゴミ処理場も平和の軸線も北海道の景色もよかった
綺麗でなおかつその場所でなければならない意味のようなものも感じた
あらすじを簡単に
音(奥さん)を亡くした家福という主人公(音は生前に複数の男と浮気をしていた)がミサキという女性のドライバーと出会い、心を通わせていく物語
ちなみに音と家福夫妻は「細かすぎて伝わらないというのも
2人とも大事にしていた」
この関係ってあこがれるな

家福は言う
妻は「すごく自然に僕を愛し裏切っていた」

これはすごく好きなセリフで、こういう浮気は女性的だなと思うし想像できる(浮気をしている音が悪い、浮気を知ってながら指摘しない家福が悪いっていうのでも一盛り上がりしそうだけど今はそういう話じゃない)音が死んだ今、家福はそれをどう乗り越えていくかという話
ただ家福には妻の行動が納得できなかった
そんな家福に
「ただ単にそういう人だったと思えないですか、何の嘘も矛盾もないように思える、おかしいですか」と岡田将生の鬼気迫るシーンがこの映画の中で一番印象的だった
この先は、ディスコミュニケーションの可能性(多言語による演劇」、感情を込めない台本読み)や、「私が殺した、私が殺した、私が殺した」という自責の気持ちという映画独自のテーマが強くなっていった気がした
そして、独自のテーマになっても雰囲気や重さを保ったまま、家福とみさきの心の交流を通じて自然に物語の先を見せてくれた
北海道のシーンでは映画になって初めてみさきの本の力を見た気がする
みさきが言ったお気に入り一言をここに残しておく
「奥さんはその男に心なんて惹かれてなかったんじゃないですか。だから寝たんです。」
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