ざき

ドライブ・マイ・カーのざきのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

一台の車を通じて、どこか機械的で無機質な台詞回しと、最低限かつアンビエント、しかし最後には原作者である村上春樹を意識したかのようなジャジーな劇伴で幕は閉じる。その楽曲もいささかポップで、物語の終わりをそのまま反映したものは確かであり、思えば劇中の台本の内容等、随所に映画であることの「わかりやすさ」のようなものは感じられた。その良し悪しはともかくとして。

それでいてなお、咀嚼するに難解な一本であることに変わりない。原作も読んだが内容は忘れてしまった。でも、それでだっていい。心の乾いた部分にそっと雨が降るかかるかのような、生きるに必要なく、しかし大切にしたいもの。そんな感動を覚えられたらなら、鑑賞するに十分価値のある時間だった。私にはそう思える。

長い時間をともに走り続けるマイ・カーとは、ともすれば誰よりも運転手の人生を知っているのかもしれない。いつか私も運転手となるのなら、こんな映画があったことを思い出しながら、目的地もなくただ駆けてみたい。自らの人生を、トランクに詰めたり詰めなかったりもして。
ざき

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