鈴木ピク

劇場版ツルネ ―はじまりの一射―の鈴木ピクのレビュー・感想・評価

4.5
京アニは『響け!ユーフォニアム』の総集編劇場版第二作で「TVシリーズと映画で大会の時期を変えてしまう」という「編集のウソ」を大々的に用いていて清々しさを覚えましたが、『ツルネ』に到っては「TVシリーズとはそもそもリアリティラインが違って見える」という「編集のウソ」を確信犯で活かしてきました

TVシリーズは言ってしまえばBLファンタジー的な世界で、ただFree!のように開き直る訳ではなく、異様にビビッドに悩む少年達の姿がかえって扉を閉ざしているように見えたのですが(その代わり、「一瞬の射」ですべてが決していく大会シーンとの緩急は素晴らしく、それだけで唯一無比の作品でもあった)、
映画版では「過去の呪縛」を子供も、そして教育者もまた等しく背負っている様を素早く繋いで、子供たちだけの繊細過ぎる世界から、一瞬の射で全てが決していく現実の重力へと最初から軸足をズラしている。

そしてこのズラしが確信犯で続くTVシリーズ2期では1期からガラッと作品のテイストが変わるのです。
京アニ作品でどうしても納得いかないものに最初の『中二病』総集編劇場版があって、話も何もなく時系列も無視してただ本編のコラージュが続く実験映画なのですが、これだけ編集で遊ぶことを覚えた過程にあの映画もあったのかも知れない、ヌーヴェルバーグやエウレカセブン・ハイエボリューションを見るつもりで見れば案外いけるのかも知れないと思いつつ、、、あります?

ともかく本作は傑作でした ここから見て全然大丈夫。
鈴木ピク

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