土星生まれを自称するフリージャズの音楽家・サン・ラによる、1974年に制作されたカルトSF。
サン・ラが謎の惑星で「ここを黒人だけの星にするでー!」とブツブツ言ってるとこから始まる。
その後、サン・ラは、なぜか電話機のついた宇宙船でオークランドに着陸。そこらにいる黒人に「宇宙なんて行かねーよプゲラw」と笑われながらも、そのうち何人かを無理やり宇宙船に乗せて去っていく、という、不可解なストーリー。
っていうか、それ、誘拐だよね。
不可解といえば、サン・ラ自体も、謎のお盆みたいなのをずっと頭に乗せてて、気になりすぎるけど誰もツッコまない。昔あった「オプーナ」というゲームのキャラみたいだった。↓以下、オプーナAA改変。
/ ̄\ __ノヽ、_ノ
| | ) 黒人は
\_/ <. 宇宙に来いや
| ノ !!!!
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∩ / ::\:::/:: \ . ∩
l ヽ∩ / .<●>::::::<●>\ ∩ノ j
ヽ ノ | (__人__) | ヽ ノ
| ヽ \ ` ⌒´ / / j
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| さ ん ら |
基本的に、全編こんな感じ。
頭にお盆を乗せて、エジプト神話みたいなヅラを被ったオッサンの妄想を誰がまともに聞くのやら……。
ところで、頭にお盆、といえば、以前、高円寺に住んでた頃のことを思い出す。
当時、髪の毛をトサカみたいに逆立ててブーツ履いたバンドマンのパンクスが一杯いた。
陰キャの俺は、「怖いなー」と関わりを避けてたのだが、ある時、高円寺駅で、電車に乗るパンクスを見かけて、印象が180度変わった。パンクスの人って、ちゃんと、頭を横にして、トサカが崩れないように電車に乗るのね。それ見て、
「あ、意外にヘアスタイルとか気にしてる、フツーの人なんだ……」
と好感。その後、バイトで知り合ったパンクスのオッサン(もう40代なのに革ジャンだった)は、すげーいい人だった。人は見かけで判断しちゃいけないね。
閑話休題。
サン・ラと対立するキャラクターとして、白いスーツに身を包んだ「監視者」と呼ばれる鈴木雅之そっくりの男が出てくる。こいつとの対決が、もう、雰囲気だけなんだけど、スタイリッシュでカッコいい! 砂漠でタロットカード対決なんて、ジョジョのワンシーンみたいで憧れるぜ!
中でも前半のシカゴのダンスホール。サン・ラの弾いているピアノを「つまらん」と言った「監視者」にサン・ラがガチ切れ。メチャクチャなピアノ演奏してホール全体が吹っ飛ぶの、面白すぎ。サン・ラ、ジャイアンかよ。
吹っ飛ぶ中で、女の子の服が剥がれてオッパイが見える描写があるところも俺得だった。
それにしても、サン・ラのやってることがよく分からない。黒人だけのユートピアを作ったから、みんな来いよ! って言ってる割に、街で「宇宙職業案内所」を開いて、面接に来た人を禅問答で議論で追い返したり。お前、宇宙に来て欲しいんじゃなかったんかい。黒人だけの星、とか言いながら、白人の美人も誘拐してたし。かなり支離滅裂。
70年代の黒人ジャズ・ファンク系の人って、やたら宇宙を目指すんだよね。Pファンクとかアース・ウインド&ファイアとか。やっぱり、白人に支配されたアメリカに対する黒人の思いってのが色々あるんだろうな。この作品も、もしかしたらそんな、1970年代のブラックスプロイテーションに位置するのかもしれない。
ただ、作品全編を彩るサン・ラの音楽が、そういった単純な「白人vs黒人」みたいなところを逸脱して、なんか凄いものを観た、って気にさせる。音楽というより、シャーマンの呪文に近い、宇宙から発せられた謎のメッセージみたいな。
IMDBで、当時撮影に関わってた人がレビュー書いてる。ピアノをポチポチ触ってたら、通りがかったサン・ラに
「Don't play what you know - Play what you don't know」
(知ってるものをやらずに、知らないものをやれ)
って言われたエピソードがあって、面白いなー、って思った。
とはいえ、作品自体は、上にも書いたように支離滅裂。
終盤、ドヤ顔で、宇宙船に乗ってユートピアに戻るサン・ラには「お前、何しに地球に来たんだよ!」とツッコミたくなったが、カルト作品だし、まぁ、いいか……。
俺も狭い室内に、俺だけのエロトピアを作る作業に戻ろうと思います。ではまた!