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ステージ・マザーのtomie77のネタバレレビュー・内容・結末

ステージ・マザー(2020年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

音信不通だった息子リッキーの突然の訃報を受けたメイベリンは、夫の反対を振り切り、サンフランシスコに赴き息子の葬儀に参列する。そこで初めて、リッキーが恋人ネイサンと共に夢を形にしたゲイバーを経営していた事、ドラッグクイーンとしてバーのステージに立っていた事を知る。遺産相続によりバーの経営者となったメイベリンだがバーは客足が遠のき閉鎖の危機にあった。息子の夢を守りたいと、彼女は未知の世界に飛び込み、ゲイバーのショーの改善に乗り出すのだが…。

最初こそ葬儀でのドラッグクイーン達に面食らって逃げ出したりはするが、基本的にメイベリンは誰に対しても誠実で礼儀正しい。偏見や差別で相手を拒絶せず、誰の事も尊重して接するのでシングルマザーのシエナやゲイバーのドラッグクイーン達ともすぐに打ち解けていくメイベリンの姿は気持ちよく見れた。一方、メイベリンが良かれと思ってとる行動の中には無神経に思えるものもある。特に、母親の理解を得られず距離をとっているドラッグクイーンの母親に無断で会いに行き、息子さんのショーを観てあげて、と頼む所。うまくいったから良いものの、下手したら当事者の傷を深くする事になりうるので、そこはメイベリンの行動を批判的に描いて欲しかった。

このようにメイベリンがやる事は全てうまくいく。ショーの改善も店の改装も、観光客に観に来てもらう作戦も、多少の波風はあるものの、ほぼ難なく成功して、あっという間に店は大人気。メイベリンも自分の人生を切り拓き、新たな出会いもある。メイベリン視点で話が進むため、リッキーや店のドラッグクイーン達が受けているであろう迫害や苦悩は余り深く掘り下げられない。物足りなくはあるが、悪い事は起こらないから安心して見れる作品かも。ドラッグクイーンの衣装や部屋のインテリア、ショーの演出なども豪華で見ごたえがあった。
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