湯呑

エスター ファースト・キルの湯呑のレビュー・感想・評価

4.9
はっきり言って前作は昔ながらの「取り替え子」譚にとんでもないオチをくっ付けただけで、そこまで感心する出来でもなかったし、良くも悪くもあのオチで完全に閉じきった作品に続編なんかいらないだろう、と思っていたのだが…いや、これはすごい。
前作の内容を観客が知っている、という事実を物語の登場人物にまで敷衍した結果、本作はホラーというジャンルを離れてまさに異形の家族を描く物語にとなった。今回のエスターは前作の様なイカれたモンスターではない。彼女を上回る様な奇人変人が登場する本作では、むしろダークヒロインとしての側面が強調され、思わずエスターを応援してしまう瞬間すらあるのだ。ホラー映画としての続編を期待していた向きは肩透かしを喰らった気分になるだろうが、結局エスターの目的が何なのか、彼女を衝き動かしているオブセッションはどこにあるのか、という点が今ひとつ曖昧だった前作を、本作は上手く補完している。続編を作るのが難しい作品をシリーズ化させる為に前日譚を描く、というのはよくある手法だが、本作はこなれたアクション演出も含めて最も成功した部類に入るだろう。どう見ても前作より歳をとって見えるのに「何か文句あんのか?」とでも言いたげなイザベル・ファーマンの堂々たる演技も見事。
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