あ

エスター ファースト・キルのあのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます


事前情報を入れずに鑑賞し始めると、あの後の物語だろうと盲信し切っていた僕はなんだか違和感を感じ、一旦ネットで調べてみる。

てっきり、前作でエスターが実は生きてました!みたいな復活のリベンジエピソードかと思いきや、まさかの前作の前日譚の物語という事で、僕のエスター2は勝手ながらも、動揺気味に、そんな滑り出しで始まる。

前作では、養子のエスターが実は成人女性、精神病質者で猟奇殺人鬼だった。という衝撃的なオチだったが、

今作に於いて、その高低差をどうやって作るのか、はたまたどの角度から突いてくるのか。ここが今回の見所でもあり、楽しみでもあった。

今回、エスターの人間性をよく理解した視聴者たちが、恐る恐る彼女の過去を覗いていくような、ターゲットにされた人間たちの恐れ慄く姿を見届ける形なのかな、などと漠然と思っていたが、やはりそんな一辺倒では終わらない。

それは比較的中盤に、展開は動く。そして観る者を動揺させる。

本物のエスターは4年前、失踪ではなく、兄のガナーによる過剰な暴力、いじめによって既に命を落としていた。
真実を知った母トリシアは、死体の隠蔽に加担する。

残った我が子を守るために、愛する夫を悲しませないためには手段を選ばない、家族への歪んだ愛によって形成された、文字通りの頭のおかしなヤバい母親である。

父アレンへの愛とそれぞれの罪のため、利害の一致したエスターと母トリシアは、一時的に手を組み、平穏で仲睦まじい母と娘を装う。

無論、そんな関係がいつまでも続く訳もなく、平穏で仲睦まじい母と娘、最終的には殺し合いになる。

無双状態だったエスターにとって、
母のトリシアが今回好敵手であり、前作の狩る者狩られる者の関係性から、狩る者対狩る者という、また少し異なった緊迫感があった。

どちらの緊迫感が良いか、これは勿論好みが分かれるだろうが、
忍び足でそろそろと、ゆっくり背後から忍び寄って、唐突にうわッ!と驚かすような、衝撃的な恐怖がエスターの良さであり、個人的には改めて前作の良さを感じた。

加えて、今作への疑念も残る。

やはり童顔とは言え、大人になったイザベル・ファーマンが"老けない"が特徴のエスターを演じ、それが、前日譚となると少し無理がある。

試しに続けて前作を鑑賞したが、やはり繋がりに違和感がある。
物理的限界は当然あるのだから、このタイミングで無理に前日譚を制作しなくても良かったのではないか。と。
エスターの世界観を尊重すればこそ、そう思えてならない。

エスターの行為は決して許される訳ではないが、少し情が移ってしまうような、愛の枯渇、孤独から来る悲しみを持つ人物であり、
今作の冒頭、エストニアの精神病院で語られた、エスターの注意事項と矛盾してしまうのだが、これもまた、エスターというキャラクターの魅力なのかも知れない。

とは言え、リーナがエスターになるまでの経緯。
前作の冒頭や、エスターの部屋の蛍光塗料の意味。
前作で、少しだけ出て来た、エスターとオルブライト家の火事について。など、

色々疑念や違和感を綴ったが、エスターの真実が紐解かれる物語であるため、何だかんだ言ってより深く、エスターを楽しむ為には鑑賞必須な続編だった。
あ