oden8

疾走のoden8のレビュー・感想・評価

疾走(2005年製作の映画)
4.3
あなたは何を思い走っていますか?

SABU監督の作品を観るんは"D·A·N·G·A·N RUNNER""MONDAY"
に次いで3作目。
この方の描写の仕方やメッセージが古く感じるのに、僕にとっては新鮮さで溢れている。
10年以上も前の作品なのに、これまで僕が観てきた作品とは違うジワジワと語りかけてくる狂気と非日常を感じる。
なのに、それは日常で…目を背けていただけなのかもとも思う。

この監督さんの世界観がややアウトローな感じがするのに、僕がすんなり入り込めたのには俳優陣の魅力がデカい。
俳優のキャスティングのセンスがやべぇ。僕の中では、銀河系(02〜05シーズンのレアル・マドリードみたいな)俳優ばかり。
それでいて男臭い。男性陣の俳優も然ることながら、女性陣の俳優にもそれが顕著に見られる。
今回の作品でも、中谷美紀のミニのチャイナドレス姿の破壊力よ…。安っぽいエロさが、素敵な俳優さんにより極上の色気に昇華される。堪りまへんなぁ。

僕が感じた物語のテーマは、"運命と宿命"。
自分次第でどうなるか分からない事象と、何者かに決められている事象。
"運命"や"宿命"なんてもんは、所詮…結果論や言い訳の様に聞こえてしまう。
だけど、何か見えへん力や抗う事の出来へん力に屈することで生きのびれることも多々ある。
この作品から感じるのは、そんな生き方へのアンチテーゼやろうか…。
でも、"あなただけじゃないんだぜ"と寄り添ってくれているようにも感じる。

"疾走"。
逃げ出したいことが、たくさんあんのに逃げだせへん。
やりたいことが分からへん。やりたいことが上手くいかへん。
社会も人生もクソやな。
人生とは不条理だが、なんて素晴らしいんだ。
喜びと悲しみ。痛みと快感。
あらゆる感情を自分の中で消化吸収して、吹き飛ばす為に走るんかも。

自分ではどうすることもできない、この世の重力に葛藤する登場人物。それを至極の俳優さん達の重厚な演技で魅了させてくれ、息苦しさと生き苦しさが伝わってる。

自分の心が違う何処かへ失踪してしまわないように走るんかもしれへん。

cast(役者·キャラ) 5
story(物語) 4 
architecture(構成) 4.5
Picture(映像) 4
acoustic (音) 4
22-150
oden8

oden8