こたつむり

みんなのしあわせのこたつむりのレビュー・感想・評価

みんなのしあわせ(2000年製作の映画)
3.4
♪ 僕の目玉のオブラートが
  こびりついてて離れないけど
  君はまったく気付かないふり

センス溢れる瀟洒なオープニング。
ゴミの中に埋もれた死体。群がる蟲。
骨を舐める猫。湿気と腐臭が混じった空気。

もうね。最高の序盤でした。
ミステリ好きならば確実に喰いつく展開。
ニヤニヤが止まりませんでした…が、方向性が見えてくると次第に失速。

しかも、登場人物に共感することが難しく。
要は自分勝手な人たちの自分勝手な物語なので、肩が下がるばかりなのです。

特に主演のカルメン・マウラの立ち位置たるや。知的な部分が少しでもあれば良かったのですが、色々と“足りていない”言動に満ちているので“見放したい”気分に包まれまれるのです。

ただ、彼女はスペインではかなり有名な女優さん。共感できない“厭な女性”は製作者の意図どおりに演じているだけ。その証拠に本作でゴヤ賞主演女優賞に輝いていますからね。劇中で自分を「若者」と称したのも“わざと”だと思います。何しろ、実年齢55歳は…ゲフンゲフン。

また、本作の売りはテンポの良さ。
登場人物たちに脊髄反射的な言動が多くても、右に左に上に下にと振り回されるので萎える暇はありません。その辺りは、さすが鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシア監督。安定した筆致でした。

それに監督さんの変態性は少ないながらも健在。ダース・ベイダーが風呂場を覗きながら「フォースが漏れる」と言う展開は面白かったです(何を言っているのか分からないと思いますが、僕も分かりません)。

まあ、そんなわけで。
欲に狂った人たちの狂騒曲。
3億ペセタ(日本円で2億円強)を巡って繰り広げられるブラックコメディとして捉えれば、皮肉たっぷりの物語でした。ただ、湿度は高いので爽快な部分は皆無です。鑑賞するときは期待値低めでどうぞ。
こたつむり

こたつむり