えいがうるふ

ズーム/見えない参加者のえいがうるふのレビュー・感想・評価

ズーム/見えない参加者(2020年製作の映画)
3.9
巷の評価は低いが自分にはかなり面白い作品だった。
途中で展開の予想がつく単純な話ながら、まさに今だからこその臨場感があり、画面に映る出演者たちの状況を割とリアルに想像できるだけに思いのほか怖くて変な笑いが出た。

もちろん、評価が低い理由も分からんでもない。この作品の場合、視聴環境や観客それぞれのコロナ下での日常生活次第で大きく評価が分かれて当然だと思う。

そもそも、この主人公達と同様に、気のおけない仲間とのオンライン飲み会というシチュエーションを実際に経験したことが無い人にとっては、この荒っぽい映像や雑(に見える)編集ならではの臨場感は全く伝わらないだろう。
個人的には、画質の粗さや参加者それぞれで統一感のない解像度、自宅でのオンライン飲み会の気軽さからプロフ画像とかけ離れたスッピンを晒す女子達などなど、まさに自分が実際に何度も参加してきた女友達とのzoom飲み会の様子そのもので、かなりリアルだった。

だからこそ、相手の映像の背後に変なものが写って思わず凝視したとき、自分もまたカメラの前にいることを忘れて変顔を晒したり、そのままカメラを切り忘れてさらなる醜態を生配信してしまうような、身近なあるあるの連続にイヤ〜な親近感を覚えた。
まして、リアルタイムでやりとりしている相手が突然何かヤバい状況に陥っても、リモート故に何も出来ずひたすら怯えつつ目が離せないという恐怖ともどかしさ。これまたヒシヒシと伝わる臨場感に嫌でも引き込まれてしまった。

自分も実際、知人とのオンラインミーティング中に突然画像が乱れ叫び声が聴こえた直後画面が真っ暗になり通信が途絶えてしまったことがある。
たまたま相手の居住地で割と大きな地震が起きたことがすぐ分かったものの、突然のことに呆然としたし、その後数時間も相手との連絡がつかず安否を心配したものだった。

低予算かつ実際にロックダウン中という制約のある制作状況を逆手に取り、敢えてこうしたチープな演出をそのまま生かした編集が功を奏している。狙って作ったのだとしたらなかなか秀逸だと思うが、たまたまやれる範囲でなんとかしたらそれっぽく仕上がって結果オーライ、というだけかも笑

だとしても、それも作り手・売り手の才能のうちだろう。
コロナ禍という全世界共通の制約ある生活事情を切り取り、スパッと短編のエンターテイメントを仕上げた若きクリエイター達のアイデアとタイミングを逃さず公開に漕ぎ着ける行動力には満点を差し上げたいほど。

ところでこの作品、間違っても映画館の大スクリーンなんかで観るもんじゃない。粗が目立つばかりで興醒め確実。尺も短いしなんだこれ金返せって思うかも。
一番いいのは登場人物たちと同じく、深夜の自部屋で一人でノートパソコンなど自分が普段実際にリモート会議アプリを利用する環境そのもの、という臨場感maxでの視聴がお勧め!
同様に、それぞれ個別の視聴環境の仲間とウォッチパーティなどのリモート同時視聴でギャーギャーツッコミいれながら見る作品としても最適だと思う。