ずどこんちょ

マスカレード・ナイトのずどこんちょのレビュー・感想・評価

マスカレード・ナイト(2021年製作の映画)
3.5
「"滅相もございません"ではなく、正しくは"滅相もないことでございます"」となります。勉強になります。

「マスカレード」シリーズの続編。
またも新田刑事を始めとする警察の捜査員たちはホテルマンとして一流ホテルに潜入捜査に入ります。
すべてのお客様を歓迎して迎え入れるホテルマンと、すべての客を容疑者として疑う警察。立場の違いで時にぶつかりながら、真相究明に向けて物語は進んでいきます。

今度の舞台も同じく一流ホテルのホテル・コルテシア東京ですが、今回は年末のカウントダウンパーティが舞台です。
証拠が少なく謎の多い殺人事件の犯人が潜んでいるという密告状を受け取った警察たちは、再びこのホテルに臨時の潜入捜査に入ります。
ただでさえ怪しい客が出入りする人気のホテルですが、今回は更に難易度を極めていました。なんと犯人が現れる可能性のあるカウントダウンパーティは仮装パーティーだったのです。
どんなに入り口で身元を照合しても時間が近付くにつれて姿を現し始めたのは、正体不明のマスクを被った仮装者たち。
確かにホテルには年末のイベントで来客をもてなしたいという意向があるのは理解できますが、人命がかかっているかもしれないのに仮装パーティーを実行するなどなかなかリスクのある決断をするホテルです。

今回も木村拓哉演じる新田刑事と、長澤まさみ演じる優秀なホテルマンの山岸が時に対立し、時に意見を合わせてタッグを組みます。
山岸は本作ではコンシェルジュ担当となっており、以前にも増して客の要望に応える事をホテルマンの誇りとして無理難題を押し付ける嫌な客にも知恵を使って対応します。
自分なら客の要望に振り回されながらあんなに柔軟に対応できないだろうなぁと、ホテルマンの仕事を心から尊敬します。
フィクションとは言え、窓から見える看板を隠せなど、どうして平然とホテルに要求できる客がいるのだろう。カーテンを閉めればいいのにと思ってしまうのが、ホスピタリティに欠けてるのでしょう。

前作もそうでしたが、今回もとても怪しい客に扮したゲストが沢山登場します。
ホテルの客は日常を忘れてくつろごうと、様々な事情を隠して偽りの姿でホテルに訪れています。そこが一流ホテルならなおさら。客は、一流ホテルの客として振る舞い、善意の客を演じながら受付に訪れるのです。
だからこそ皆が怪しく見えてきます。
不倫相手と同じホテルに泊まることになった男とその家族。
そしてその男と同じホテルに宿泊した愛人。
いかにも怪しい大きなキャディバッグを手元から離さない男性客。
その姿が存在しない夫と宿泊する偽名の女。
無理難題の要求ごとばかりを押し付けて恋人を探す偉そうな男。
メインゲストのみならず、意味深にウロつく客や横切る客、立ち止まって何かをしているスタッフなど、次第にこのホテルにいるすべての人間が怪しく見えてきます。
前回、あのような特殊メイクトリックがなされましたからね。今回もその辺りも含めて油断は禁物です。
やがて事件が過去の未解決事件と繋がり、警察に届いた密告状の送り主が分かった時、怪しかった客たちの正体や関係性が一気に明らかになっていき、犯人にグッと近付いていくのです。
正直、今回は前作と違って最後まで犯人が誰だか決めかねてグルグルしていました。
参りました。

前作に引き続き友情出演のさんまさんは今回ガッツリと顔出しで登場しておりましたが、いつか是非このホテルの怪しい客の一人として登場してほしいものです。
あと、全然関係ない話ですが、長澤まさみと小日向文世が二人きりになった一瞬のシーンでは二人が詐欺師としての本性を露わにするのではないかと世界観を壊して余計な想像をしてしまいました。
もうあの二人が揃うと、ダー子とリチャードにしか見えなくなってしまった……