海り

冷血の海りのネタバレレビュー・内容・結末

冷血(1967年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

至って軽薄に犯罪に走り、逃げ、捕まり、処刑される。目的はカネ。きっと新聞からは、それ以上もそれ以下も読み取れない。

その奥にある、冷血の中にある、人間の心理の謎。言葉や論理にならない何かが、彼に紳士の喉を掻っ切らせたのか。それが何であるかは語られない。本人も分からない。

可哀想な生い立ちを持つ犯罪者は、罪を軽くしてやるべきだという主張が世間ではちらほら見られる。本作もそう仄めかしているようにも思えるけど、検察側による聖書の引用がその筋を否定している。「汝、殺すなかれ」。犯人への同情が主題ではない。

演出の面も美しかった。車とか銃口とか電話とかで別々の場面を結びつけるカットの繋ぎ方は、見ていて面白いだけではなく、脳内と現実が入り乱れているであろうペリーの精神状況ともマッチしている。

顔半分に映る雨粒の影は言うまでもない。

そして、最後の心音からのタイトルが出るところ、余韻を持たせすぎない終わり方。

全体的に温度が低く、淡々と進んでいく展開。ストーリーについても、ノンフィクションということもあって、さしたる盛り上がりはない。だからこそ、感傷的な飾り立てがないからこそ、心に残るものがある。人の謎は謎のままで、わだかまる。

それにしても、「多分謝りたいんだと思う…でも誰に?」か。とてつもない言葉だ。
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