ヘソの曲り角

冷血のヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

冷血(1967年製作の映画)
4.2
始まって一分で傑作とわかる。キレキレの編集と撮影、一流の役者、適切な題材の全てが揃いプロフェッショナルの仕事が130分粛々と遂行されていく本作はあまりにcoolだ。ロバートロッセン「ハスラー」(1961)などを思い出す硬派なモノクロ映像とこれ以降全盛期を迎えるアメリカンニューシネマのような若者の無軌道さが絶妙な配分で組み合わさっている。警察官サイドのいぶし銀のかっこよさはフライシャー作品のようで、途中からあっちこっちに途方もなく移動する逃亡パートは「俺たちに明日はない」「地獄の逃避行」などを想起させ、1968年ならではのミックスだと思う。

事件発生当日(決行前)から捜査、逃亡生活の果てに逮捕、取り調べと裁判から独房生活、そして絞首刑。どのシーンも濃密で130分の中にほとんど隙が見当たらない。何より取り調べ後の護送中の独白で犯行の様子が描かれるというここだけ時間軸が変わっている構成は王道だが素晴らしい。ペリーの妄想シーンのうまさも特筆すべき点である。相棒のディックはただのどうしようもないイキリカスだが彼の無謀な強盗計画に巻き込まれ狂気を発動してしまったペリーという人間の魅力がこの作品の何よりの面白さに違いない。それを見事に演じきった怪優ロバートブレイクの功績は計り知れない。

監督、脚本リチャード・ブルックス。撮影コンラッド・L・ホール。音楽クインシー・ジョーンズ。音楽が若干うるさい気がするがいい仕事をしている。コンラッド・L・ホールはマジで天才だと思う。ラスト処刑場に向かう前の雨が伝う窓の光がロバートブレイクの顔の左に当たり、親父に殺されかけた過去の悲劇を独白する彼の悲しみが映し出される演出は白眉である。