真田ピロシキ

劇場版 Gのレコンギスタ III 宇宙からの遺産の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.8
おおっと。新作が始まってしまったじゃないか。早く見に行かないとすぐに終わってしまうぜ。というわけで急ぎ見た劇場版Gレコ3。もうTV版を詳しく覚えていないので記憶が不確かだが、新作画はかなり増えてる?冒頭は新作画なはず。ロックパイがモランで扱ってたメガビームキャノンを放つ機体はTV版にもあったっけ?流石にこのレベルで新規カットを入れることはない気がするのであったんだろうな。

とかく物語が詰め込まれすぎてたTV版だったがこの映画ではかなり補完されてて、唐突に正気に戻ってて面食らったラライヤの描写は細かく描かれており、この辺から登場人物が増えてさらに人間関係が複雑になるにあたって一定の配慮をしていると思われる。だからと言って何も考えずボサーっと見るのを許してくれるような甘さはなくて、協力と対立を繰り返す複雑さはこれぞGレコであり富野作品の肝。特にGセルフを巡ってロックパイ、マスク、クリムらがそれぞれの思惑で自陣営に置こうとするところは誰しもが単純に敵と味方だけで語れない面白さがある。クリムは一応一貫して味方なんだけど全幅の信頼を置く仲間じゃないって言うね。この複雑さを妥協しない受け手への信頼を持っている富野監督は好きです。YouTubeで富野信者を自称する人が事あるごとに「Gレコ 意味不明」とネタにしてたんだけど「お前は一体富野作品の何を見てたんだ。本当に信者なのか?」と言いたくなったね。1作目のトイレみたいに本作では戦闘とは関係ないガレキ掃除があってこれは後の展開にも関わるのもあるのだが、こういうその世界の人間の営みを省略してないのもよくて、5部作にしただけの意味を感じさせる。劇場版∀は細部を削りすぎてたし、新訳Zに至っては映画の体をなしてるか怪しかったが、ここに来てようやくまともな富野監督の映画を作らせてもらえてるんじゃないかな。

弱いところはMS戦で突出した存在がなかったことか。遠近でオールマイティに戦うクリムとミックのジャハナム、ヘカテーやクリムにロケットキックをぶちかました後のミックとのやりとりが面白いバララのビフロンはあるが前作のデレンセンには及ばず。攻守一体のビームマントを備えたガイトラッシュも出番が遅くてまだ食い足りない。ここからGレコのビーム伝説が本格的になるので次作に期待だ。「司令、ボク頑張ったんですよ!」「分かってるよ、ロックパイ!」このトワサンガのバカップルは嫌いになれず、この先の運命を思うと湿っぽくなる。それにしても何でムーンレイスがトワサンガになったんだろう。やはりディアナ・ソレルが普通に歳を取って退く存在になったのが大きかったのか。