アニマル泉

グッド・フェアリーのアニマル泉のレビュー・感想・評価

グッド・フェアリー(1935年製作の映画)
4.5
プレストン・スタージェス脚本でウィリアム・ワイラー監督のロマンチック・コメディー。二人の才気がみなぎる痛快作だ。孤児院のヒロインというのがスタージェスらしい。冒頭、少女たちと先生の授業がカメラを引くと孤児院だとわかる、ワイラーが上手い。マーガレット・サラヴァンが素晴らしい。登場場面は子供たちにお伽話を聞かせる。魔女になって箒で飛ぼうとして脚立をひっくり返し、ぶら下がった電灯ごと落下する。「魔女」「妖精」は本作のテーマだ。
孤児院から映画館の案内係に、そこで会ったレジナルド・オーウェンに誘われてホテルのパーティーへ、そこで富豪のフランク・モーガンに迫られて、既婚者だとウソをついてハーバート・マーシャルに出会う。次から次への展開が面白い。サラヴァンとオーウェンの出会い方がしつこくて絶妙だ。こうやったら出会いの場面が作れるというお手本である。とにかくオーウェンとモーガンのやり合いが絶品だ。サラヴァンとマーチの主役二人を完全に食っている。オーウェンがことごとくモーガンの下心を邪魔するのが可笑しい。オーウェンが給仕である設定が効いている。「邪魔する」「壊す」が本作の主題だ。この主題をスタージェスなので過剰にエスカレートさせていく、やりすぎになる。ホテルの部屋でモーガンに逢引きを迫られているサラヴァンを部屋を真っ暗にして救い出す、このドタバタは音だけで描かれる、さらにホテルのバックヤードをサラヴァンを抱え上げてオーウェンが逃げる、この一連のワイラーは冴えている。
本作は才気のままに作っているのでバランスは悪い。マーチの登場は遅すぎるだろう。まあ、しかしそんなことを圧倒するパワーと感性が本作の魅力だ。マーチの顎ひげ、サラヴァンのキツネの襟巻きが効いている。
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