冷蔵庫とプリンター

グッド・フェアリーの冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

グッド・フェアリー(1935年製作の映画)
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 マーガレット・サラヴァンの愛らしい演技にプレストン・スタージェスによる不条理でエネルギッシュな脚本を、名匠ウィリアム・ワイラーが素晴らしくまとめ上げた、スクリューボールコメディの傑作。

 まず主演のマーガレット・サラヴァンだが、彼女は純粋無垢ゆえに無謬性、神聖性を帯びており非常に素晴らしい。キツネの襟巻きのモチーフが印象的で、後にエルンスト・ルビッチ監督作『街角/桃色の店』に主演した際にも冒頭で用いられている。

 映画ファンのあいだでもとりわけ熱心なファンの(たぶん)多いプレストン・スタージェスが脚本を担当したようで、勘違いから生じる複雑な会話劇等、さすがの"散らかりぶり"に笑みが溢れる。ちょうど本編が半分過ぎたところでようやく「運命の男」が登場するのは遅すぎる気がしないでもないが。。
 本作の映画内映画(ヒロインが何を言っても"Go"としか返事しないメレディスという男が出てくる)の内容こそ実にスタージェスらしいもので、これがラストシーンでのハーバート・マーシャル演じるスクラム博士の台詞"Don't go"に対応しているのも巧い。

 本作をロマンティック・コメディとしてまとめ上げたのは、のちに『ローマの休日』を監督することになる名匠ウィリアム・ワイラーで、合わせ鏡やらせん階段を映した意外性のあるショットは視覚的な面白さがあり素晴らしい。スクラム博士が髭を剃るシーンで、"Off"と言い切る博士の髭を床屋がしぶしぶ切り落とすというシーンがあるが、このくだりは、後に『ローマの休日』でオードリー・ヘプバーン演じるアン王女が長い髪を切るシーンにもそのまま使われている。