ぼっちザうぉっちゃー

ブレット・トレインのぼっちザうぉっちゃーのレビュー・感想・評価

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)
3.8
想像の5倍くらい原作通りだったのでめちゃくちゃ驚いた。

ハリウッド映画なので大前提、終盤のエクスプロージョンと全編に香るトンデモジャパンは恙ないとして、その他登場人物や細かい小道具、展開などがほとんど原作そのままなのがとにかくすごかった。いや面白いとかではないんだけれど、なんか単純にすごいと少し感動してしまった。

まず原作最大の魅力である登場人物の色というのを十二分に生かしたアレンジがなされていたのが一番嬉しかった。そして名前(kanji)をネオンで表示させるポップでキャッチーな演出(最大の功労者「ボトルウォーター」には笑った)で近未来新幹線内のイメージを統一しながら、原作よりさらに強調された登場人物同士の「運命」の交錯というのをメインエンジンに、原作既読者ですら想像もしないところに連れて行ってくれる。もう力技というか妙技、やっぱなんかすごい。

特に巧いなと思ったのが、アクションとしてはとことん地味な内容を、ガイ・リッチー味あるようなすれ違いコメディ風に仕立てたところ。
限られた空間で人知れず繰り広げられる殺伐とした行き違いという原作からの面白さが、ブラット・ピット演じるてんとう虫をはじめとするキャラクターたちのコミカルなマイナーチェンジや、ナーフされたリアリティレベルによって絶妙なおかしみとして表れていた。

ここまで言ってしまうと原作読んでるから面白いだけみたいに聞こえるけれど、実際そんなこともないのではと思う。もちろん原作は大好きだけれど、映画は映画としてしっかり独特過ぎる世界観と奇想天外なシナリオを満喫できる。それでいて小さなアクションや台詞回しに原作へのリスペクトも感じられるので、よくある実写版言い訳のように全くの「別物」として観るのもなんか違う、というなかなかエキセントリックな作品だった。