カレーをたべるしばいぬ

ブレット・トレインのカレーをたべるしばいぬのネタバレレビュー・内容・結末

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます


えーっとこれはキルビル...ですよね?

伊坂幸太郎の原作小説は未読ですが、本作の随所から原作の魅力や伝えたい(と思われる)面白さが滲み出ていると感じた。一方で、本作自体は映画全体として微妙な出来。文章表現を映像表現に変換する際に、魅力を上手く落とし込めなかったような印象を受ける。

■序盤
うーーーん…。退屈です。

■中盤~最終盤にかけて
急に物凄く面白かったり、思わず唸ってしまう表現があったり、かと思えばまた失速したり。とイマイチ煮え切らない。
でも真田広之が出てきた辺りからはアツい。超カッコいいシーン目白押し。

■すべてを説明してしまう
この映画の最も気になる点。
ほら!こうこうこうなったからこうなったんですよ。こんな因果だから、こういう帰結をしたんですよ。懇切丁寧に、カメラワークと台詞で説明してくれる。
いや、僕ら今見てましたやん、それ。という場面が多過ぎる。
この辺りに上記のような変換の不具合を感じてしまう。

■特に好きなシーン
ブラピ&温水トイレ。送風で髪をなびかせるブラピとか最高だろ。本人のディレクションというから益々好印象。
ペットボトルの主観視点。映画のテーマと非常にマッチしていて本当に素晴らしい。水音もグッド。

■そこまでテンポが良いわけではない
まさしく弾丸列車の通りハイスピードアクションが繰り広げられるのかと思いきや、撃つ前にグダグダ喋ったり、扉の向こうにいることが分かっているのに銃を撃たずに開くのを待って殴りかかったりなど、引っかかる部分が多い。洒落たセリフを交えながら戦闘をするって、やっぱりキルビルとかパルプフィクションよろしくタランティーノオマージュなのかな。向こうはカッコいいけど、こっちは退屈さが勝ってしまった。デッドプールは監督との相性が良かったんだと思う。
肝心のアクションはスラプスティックなジャッキー的コメディ調。こちらとも相まって全体的に古臭さを感じる。

■どうしても抱いてしまうモヤモヤ
自国の文化や歴史について特段詳しいわけではないが、日本特有の暮らしや社会の距離感が性格に深く根付いてしまっているため、そこにかけがえのない居心地の良さを感じている自分がいることは確か。
だからこそ、偽りの日本を娯楽として消費されることに一定の嫌悪感を抱いてしまうのかもしれない。でも、こんな極東の島国の、更に一部の映画好きのために「正しい日本」を描く必要はないというのも激しく理解できる。それに、海外の人からは本当に日本はあのように映っているのかもしれない。モモもんの扱いも雑なので、日本のポップカルチャーはあんな風にウザがられてるのかなと思ったり。
日本テーマにしては実写風景のカットや日本人キャストが極端に少ないのは、コロナ禍であったので仕方ない。
そうでなければ、騒音を注意してくるオバちゃんも、ひいては黒幕まで日本人でないのは納得できない。

■因果の描写が短絡的
自分の攻撃に起因する敗北とかバタフライエフェクト的な表現とか、それ自体は良いと思うけど説明が後付けだったりご都合主義的だったりするのは如何なものか。オリエント急行殺人事件並とは言いませんが、もう少し複雑性があった方が嬉しかったです。伏線回収に成り得ない雑な足し算で後手後手感がありました。
多分、この辺も小説では上手く纏まってるんだろうと。
この映画の肝の部分だと思うのですが、チープさで芯がガタついているのが残念。

■バランスがイマイチ
登場人物の活躍の尺がバラバラなのが今一つ気持ち悪い。それに、様々な殺し屋が登場し、その因果が絡み合っているのなら、主人公のあのオチは弱い気がする。知られざる秘密が有るのかな~と期待し続けてしまった自分も悪いが、ブラピ級のスターキャスティングで結局一介の巻き込まれでしかないというのはちょっとなぁ。てかブラピってそんな役が多いじゃん!飄々としていてでも裏がある、みたいな…

■ブラピはひたすらに良い
元々好きな俳優なのもあるけど、当時の50後半でも超カッコいい。スーツケースの取り回しとか最高。終盤で髪をまとめるディレクションも良い!イケおじ感が限界突破です。個人的にマーベル等のシリーズ系ヒーロー映画には出てほしくない俳優の一人。デップー2は2秒しか出てないからノーカン。同じ監督だけど仲良いのかな。

■総評
爽快スピードアクションとして観るべき映画なのでしょうが、細かい部分が気になって寧ろスッキリしないという。でも素晴らしい画も沢山。
新幹線の名前がゆかり(縁)なのも上手い!