ハルノヒノヨル

僕たちは変わらない朝を迎えるのハルノヒノヨルのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

理想と希望。
理想というものは美しい。無駄がなく効率的だし、形が整っている。
でも実際には理想のとおりになんて行かなくて、こうしたいって思うのにうまくいかないことばかり。
主人公は理想を描き続けていた。そして理想のとおりにあろうとした。
彼女に言った「おめでとう」は、きっとそうだったのだろう。
ストイックにも見えるその姿勢は、ままならない現実に身を置くことへの恐れの裏返しのようにも見えた。
そこへ留まっても後悔がないわけじゃない。
選ばずに逃げたから、余計に後悔は残る。
彼の現実の希望を形にした物語では、結婚報告をした彼女と無言のまま夜の海に走る。
下北沢から東京タワーを横目に首都高を成田ナンバーのタクシーで走って、江ノ島のロータリーで降りる。
位置関係は無茶苦茶だ。それでいい。
これは彼の脚本だから。
江ノ島港で並んでたあいのない話をする。その中で、彼が彼女に聞きたかったことが語られる。
こうであってほしいと彼が望む言葉が。
朝はいつもと変わらずにやってくる。
そこで伝えた「おめでとう」は現実に伝えたものとはちがって、すっきりと晴れたものだった。
雨のパレードのmorning。彼の失ったものが切り取られた風景がひどく美しいものに見えた。
ハルノヒノヨル

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