Shingo

チャイニーズ・ゴースト・ストーリーのShingoのレビュー・感想・評価

2.8
オリジナル三部作から30年あまり、「倩女幽魂」のリメイク作。オリジナルの副題はパート2が「人間道」、パート3が「道道道」だったが、本作は「人間情」。パート1のリメイクではあるが、パート4と位置付けてもいいかも知れない。パート3も、前作から100年後の設定だったし。

オープニングから、オリジナルの「倩女幽魂」のテーマ曲、テーマソングが流れて、それだけで30年前にタイムスリップした気分。パート1に衝撃を受け、以降は古装片を片っ端から見ていた。ツイ・ハーク万歳。
主演のジョイ・ウォンの美しさは、私の中の美女の定義に大きく影響していると思う。純情な青年と、妖艶な美女の組み合わせも、今でいう厨二ごころをくすぐるものだった。今ではコンプラにひっかかるかも知れないが、ちょいエロ要素が入っているのも良かった。

老老の居城が、なんだか「鬼滅の刃」の無限城みたい。老老の正体は千年樹齢の古木であり、人の精気を吸って生きている。男女の区別がなく、人間を妖怪化して手下にしているが、そこも含めて「鬼滅」っぽいなという印象。
妖怪ハンターの道士が、巨大な剣を振り回し、無数の剣を飛ばして戦うのはブリーチっぽい。もちろんこれらはオリジナルの設定・アクションを再現したものであって、日本のアニメの影響ではない。
ただ、中盤で糸を張り巡らす妖怪が出てきたが、これは那多蜘蛛山の鬼が元ネタかも知れないなー。オリジナルには出てこないキャラだったし。
あと、大男が糸でバラバラになるところ、バイオハザードのパロディやん。

全般に、パート1のストーリーを再現しているが、パート2で美人姉妹が主人公を取り合い、姉の方が身を引こうとする流れと似た展開も見られる。若手の道士は、パート2に出てきたジャッキー・チャンのポジション?
掛け軸の美人画はパート1にも出てきたが、その絵の中の入ってしまうのは、本作のオリジナルかな。と言っても、これは別作品「画中仙」で描かれており、そのネタを取り込んでいるようだ。
「羅小黒戦記」でも、精神世界に入り込む演出があったが、それと似ている。もともと、「倩女幽魂」も「画中仙」も古典「聊齋志異」を元にしており、自ずと世界観が似てくるのだろう。

美女の妖怪シャオチェンは、今時のモデル顔で確かに美人だが、ジョイ・ウォンと比べると線が細く、妖怪ならではのパワフルさも足りない。
か弱いフリをして男に近づき、精気を吸い取ってしまう怖さ、愛した男のために戦う強さ、自らを犠牲にする健気さ。そういった部分が重要な役どころなのだが、演出的にもそこが弱い。
ツァイチェンと一緒に過ごす時間があまりにも少なすぎて、いくらなんでもこれで恋に落ちるのは無理がある気がした。

アクション面でも、残念ながらパワーダウンしている印象。思い出補正もあるかと思ったが、オリジナルの予告編を見直してみても、昔の方が迫力あって面白い。まあ、今は危険なスタントはご法度であり、昔のように体を張ったシーンが撮れないのも理由だと思うが…。
ジョイ・ウォンは、普通に火のついたお札を口に突っ込まれてたしなあ…。ワイヤーで吹っ飛ばされて壁に激突したり、地上数メートルの高さを飛んだり。

決して悪くない出来だと思うが、オリジナルのインパクトは越えられていないし、再現も不十分と言わざるを得ない。オリジナルへの愛は十分に感じられたので、ぜひパート3の「道道道」あたりもリメイクして欲しいと思う。仏ビームで、黒山の魔物を倒してくれ!
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