MasaichiYaguchi

Eggs 選ばれたい私たちのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

Eggs 選ばれたい私たち(2018年製作の映画)
3.6
子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナーを題材にした本作であるが、生理の観点から現代を生きる女性を浮き彫りにしていて、異性ながら共感するものがある。
世界的な保守化傾向から益々女性に対する固定観念や偏見が強くなっているような気がするが、今年になって東京オリンピック絡みで立て続けに噴出した差別発言の数々は、その氷山の一角に過ぎない。
この頃は大分多様化したようだが、それでも「小学校では女の子は赤いランドセルを持たされ、小さい頃から女の子は控えめになれ」と言われ、アメリカのようにワンダーウーマンのような強い女性がカッコいいというイメージがあるのに対し、日本では大和撫子のようにおしとやかに育てられる。
だから成人して適齢期とも成れば「良妻賢母」が理想像とされる。
その点から考えると本作のヒロイン2人は、この理想像に反抗して「我が道」を行こうとしている。
独身主義者の純子は卵子提供者登録説明会で、偶然、従姉妹の葵と再会する。
純子は再会した葵がレズビアンであることと、パートナーと仲違いして家を追い出されたことを知る。
ここから結婚も家庭も望まないが、誰かの「母になりたい」と願う女2人の共同生活が始まる。
エッグドナーという名称は知っていたが、どのように運営されているのかは本作を通して初めて理解した。
先ず登録には20歳から30歳までという年齢制限があり、更に登録したからといって誰もが提供者になれる訳ではなく、選ばれなければならない。
そしてエッグドナーに選ばれれば、ハワイやマレーシア等の海外に滞在して卵子を摘出し、謝礼金が貰えるというシステムになっている。
果たして純子と葵、どちらがドナーに選ばれるのか?
男女を問わず、誰だって「必要とされる人間」になりたいという承認欲求がある。
だからといって自らのプロフィールが必ずしも需要と合致するとは限らない。
コロナ禍拡大で益々景気が悪化し、社会が求めるものは狭いカテゴリーばかりで、ハードルだけが上がっているような気がする。
この作品は今を生きる女性へエールを送るものであると同時に、その社会を共有して生きる男性にとっても無関係な物語ではないと思う。