だーあま

浅草キッドのだーあまのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
2.5
大泉洋演じる深見千三郎のキャラクターが魅力的だった一方で監督脚本担当のストーリーテリングの拙さが目立った。

①詰め込みすぎ
映画の中に入れたいものが多すぎた。詰め込み過ぎで作品全体がやや散漫になっていた。門脇麦が演じる女性の作中での存在意義が希薄だった。タップダンスを練習して深見師匠に認められるまでのくだりは長すぎて作品全体のバランスが歪になってしまった。映画じゃなくてドラマでじっくりと観たかった。
作中で詰め込みたいシーンやセリフが作品中で上手く整合性が取れておらずまとまりがなかった。芸人は頭に思いついたシーンや言わせたいセリフを出発点にネタを作る人が多いと思っている。ネタの場合だと尺が短いので破綻せず終わらせられるが、これがドラマや映画などと尺が長くなるにつれてそういったつじつま合わせの作業の難易度が増し、ましてや約120分という長尺のせいで、そして愛着のせいで劇団ひとりは作品を上手くまとめることができなかったのだろう。
②説明不足
その一方でタップダンス以降の描写はあまりにも駆け足ぎみで描写不足、説明不足だった。ビートたけしは有名人だしこちらで勝手に説明不足分の情報を補完することは出来るが、上手く飲み込めない人もいるのではないか。タップダンスのくだりに妙に力を注ぐ一方で、明らかに説明不足描写不足の箇所があることから劇団ひとりの映像を通したストーリーテリングの下手さが目立つ形になった。

③セリフと演出の野暮ったさ
セリフ面でいうと会話は野暮ったく、門脇麦と柳楽優弥の会話は特にひどかった。ゴッドタンの番組企画の寸劇と冗談抜きで大差ない。屋上でのやり取りは手垢にまみれたテンプレを再構成したものでしかない。
映像演出面でいうとタップダンスのシーンの演出と場面転換、最後の長回しはダサかった。カッコいいでしょ?という感じがにじみ出ていた分なおさらだった。
台詞といい映像演出といい、野暮ったい印象を受けた。劇団ひとりはクリエイティブな方面の素質や飲み込みの良さが有りそうだが、表現に対して感性が古いという云々以前にそういったことに対してそもそも無頓着で問題意識がなさそうだ。また、敬愛するビートたけしと異なり、映画に対する愛着や造詣がさほど無いのかなと感じた。

あちこちオードリーで大泉洋と劇団ひとりが揃って出演したときに、大泉洋が劇団ひとりの撮り直しの多さについてや、後々不必要だと分かって使われなかったシーンの撮影に劇団ひとりがこだわって振り回されたエピソードを大泉が撮影を振り返りながら面白おかしげに語っていた。どこまでが本当でどこまでが冗談か分からないが、大泉洋が可哀想だなと感じた。ブラック撮影をすることで巨匠ごっこをするのは今後改めた方がいいと思う。