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浅草キッドのambiorixのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
4.0
たしかに柳楽優弥の演技はすごい!けれども、たけしっぽい髪型をして、たけしっぽく右の口角を吊り上げて、たけしっぽく肩をいからせながら喋るあの独特の仕草を見たわれわれの脳内が勝手に「たけしっぽいな」と認識して評価を吊り上げてるだけなんじゃないかとも思った。まあそれこそが実在の人物を演じることなんだと言われればそうなんだろうけど。
そんな柳楽優弥よりも大泉洋のほうがキャスト序列の上にいる理由は終盤まできてようやっとわかった。大泉洋演じる師匠の深見は「粋」そのものをまとって生きているような人なのだけれど、彼の体現する「粋」は少しずつ時代遅れのものになり、現実と齟齬をきたし始める。そしてたけしの隆盛と入れ替わるように破滅していく。フランス座を閉め、工場で働くことになった彼が休憩時間にCreepy Nutsに絡まれるくだりなんか直視できんよね。つらすぎる。でもそこにはかすかに残った芸人の矜持のようなものもほの見えてすごく印象的だった。結局、最期の瞬間まで師匠は「粋」だったし、芸人だった。
視聴中、こんな人を師匠に持てたたけしが妬ましくてならなかったし、俺も自分の好きなものにとことん殉じながら生きてみたいなあと痛感させられる一本でもありました。
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