たくみ

浅草キッドのたくみのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
4.8




すげー良かったわ…
ものすごくよく出来てた
劇団ひとり映画撮るの上手くない…?

お笑いとかほとんど興味無くて、ビートたけしもそりゃー知ってるけどファンって訳ではなく、僕なんかの世代じゃ芸人と言うよりTV番組の司会者ってイメージだった。

“タレント芸人が監督”ってだけでもう超警戒態勢でまず観ようと思わないけど、人に奨められたのがきっかけで観てみたけど、なんて言うか、すごく映画らしい映画だったというか…
心·技·体 全て揃ってるというか…
脚本も撮影も美術も役者もぜんんんんぶハイレベル、超良かった。
Netflixオリジナルだから、劇場にはかかってないのか
この映画こそ“劇場”で観たかったなぁ

まず衣装設計や部屋の家具小道具、浅草の街並みとか、とにかく美術がすごい
ホントの街並みなのかセットなのかCGなのかマジで見まごうほどだった。
作り物感が全然無くて、その時代に生まれてないから知る由もないのにどこか幼少期の薄ぼんやりとした記憶に触れるような懐かしさを思い起こさせてくれる世界観。
驚いた…


大泉洋はじめ、役者のレベルがでぇれえー高かった
自然体そのもの
気持ち悪い唐突感情ボルテージMAX叫びが無かった。
スッと入ってくる自然な演技。
“芸人”の誕生譚だからって劇中にストーリーに関係ないクソ寒いギャグ演出とかもいっっさい無くて、「映画監督です」「脚本家です」って肩書きで映画撮ってる数多の造り手よりよっっっぽど役者のことを考え映画として破綻の無い“ボケ”無しの超本気映画だった。


とっても上質な青春映画でしたね
マジで…
役者がホントに良かった…
とくに柳楽優弥と中島歩、門脇麦の掛け合いがほんんとに観ていて気持ちよかった。
こんなに清々しい青春見た事ない
ジャンル的な見せつけの青春なんかじゃない、本気で夢を追う若者たちだからこそ生まれる不思議な友情。
お手軽な感情むき出し号泣絶叫なんてない
一から最後まで積み重ねて積み重ねて積み重ねたからこそ生まれる感情
ちゃんと観る側を信じてくれてるんだって思ったし、確固たる意志と自信を持って撮ってるんだなって思えた。
お手軽でチープな演出が一切無かった。


タケが深見に「小遣いですよ」って封筒を渡すシーン。
あれすっっっごくグサッときた。
1番好きなシーン
コレこそが積み重ね。
伏線とか、そんな簡単なもんじゃない。
それ以降もう観てられないくらいよく出来てる。


そうそう、あと現代のビートたけし描写。
あれやっぱ特殊メイクだよね。
すげーよくできてると思う
でももちろん、精巧な特殊メイクでも“目”が違うとそれだけで違うって分かってしまうんだなって思った。
人の顔の認識って目なんだな〜
“生”を証明する部位なんだね


劇団ひとり監督すごい繊細な演出が多くてため息でる…
大家さんに家賃収める時見栄張って「お釣りはいいよ」って言った後、後ろで銭勘定してる奥さんがちょっとだけ不服そうな顔で振り返る…とか
「ウチも厳しいんだから」とか言葉で説明すれば簡単だけど、語らずに2人の関係性までもみせてしまうすごいスマートな演出で気持ちよかった。



日本映画観る度に
失望と、いや捨てたもんじゃないという希望の繰り返し。
こうしてまた邦画を観る人生は続く。
たくみ

たくみ