結局カレー

浅草キッドの結局カレーのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
4.8
ファーストカットでとんでもないクオリティのビートたけしを映し出しててビビる。柳楽優弥の特殊メイクに松村邦洋が声を当ててるとか。数々のビートたけしのモノマネを蹴散らす、まんまビートたけしがいた。若い頃のシーンは当然似ても似つかない容姿なのに、台詞や仕草が違和感なく確かにビートたけしがそこにいて「芸人だよ、馬鹿野郎」のセリフひとつで「あ、これは良い作品だな」って思った。凄い役者。

演芸場が廃れテレビがエンタメの主流になっていった時代。今はそのテレビ離れが進みYouTubeなどSNSがどんどん広まりつつあって文化や笑いも盛者必衰なんだなと思う。昔は良かったみたいな話は聞き飽きたけど、あの時代に聞いた“芸人”の矜持みたいなものには素直に惹かれる。「笑われるんじゃない。笑わせるんだ。」カッコいい。少し前に未完成を売りにしたアイドルが一世風靡し、エンタメの裏側がフォーカスされる時代。見えない努力より見える努力が良しとされてるようで少し物悲しい。

師匠に従事しお笑いのお約束から立ち振る舞い、姿勢を学ぶ。今はあまり聞かない師弟関係というのも、それは師匠が落ちぶれようが弟子がどんなに売れようが揺るがない親子の血縁関係みたいで、愛情と尊敬の等価交換。あの最後の居酒屋でみせた大盛況の宴すごく温かかった。

会話の節々にみせられる粋な言い回しがまたなんとも絶妙で小気味よく、笑かされ、泣かせられる作品だった。