当時ほぼ浅草のみで絶頂を誇っていた深見千三郎に弟子入りした北野武が、深見の芸を身に着け、成長し、ツービートのビートたけしとして巣立っていく話。
師匠である深見千三郎と過ごしたビートたけしの青春時代を描いている。
癖を誇張し過ぎず、コピーしながら物真似ではなく芝居で“ビートたけし”を演じきった柳楽優弥が素晴らしい。
正直ビックリさせられたし、彼の凄みを感じた。
もちろん時代に取り残され弟子が離れていく師匠の悲哀とプライドを、しみじみと、時に凛として演じる大泉洋もいい。
そして、歌手志望のストリッパーを演じる門脇麦も、深見を支える鈴木保奈美も、他の弟子たちも今はなき浅草フランス座の従業員も、とにかく出演者全てが素晴らしかった。
周りの誰もが気を使って話題にしないことをあえてネタにして、相手の出方を待つ。
落ち目の師匠と彼を見舞った弟子の間に一瞬生まれる"間"の後で始まる、予想外のボケとツッコミ、等々。
「笑われるのではなく笑わせてやる」
「芸能ってのはこういう事だ」
「プロってのはここまでやんなきゃダメなんだよ」
そんな出演者全員のプライドと覚悟でぶん殴られた感じ。
「芸人がマジになってどうすんだよ。どんな時でも笑わせなきゃダメだろうがよ」
最近のお笑い芸人たちが不祥事を起こすたびに涙で謝罪会見するのを見て、たけしさん常々言っていったもんな。
時代は変わる。
舞台でのお笑いがTVに乗っ取られ、その乗っ取ったTVの時流に上手く乗ったビートたけしの自伝が、今TVにとって代わろうとしている配信で公開されるというのは何とも言えない哀愁を感じるが、この作品がNetflixだけでしか観れないというのはもったいない。
是非多くの人に観てもらいたい。
ただ一つ、最後に今のビートたけしが昔のフランス座を歩き回って今は亡き昔の仲間と出会っていくシーンはちょっと長すぎで、劇団ひとり監督のビートたけしへの忖度を感じてしまったのが残念…。