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オーストラリアのsatchanのネタバレレビュー・内容・結末

オーストラリア(2008年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

オーストラリアの広大な大地に魅せられました。特に空撮された岩山や渓谷は、ため息が出るほど美しい。ウルルとは一味違った地層の見える岩山。ダーウィンからほど近いカナナラの写真が、映像とよく似ていました。パヌルル国立公園や、ギブ・リバー・ロードといった観光地があるようです。撮影中、42.7度に達する日もあった模様です。「星の王子さま」の挿絵のようなバオバブの木も出てきて、調べてみたら、マダガスカルやアフリカ大陸だけではなく、オーストラリアにもあったんですね。バオバブが10種近くあることが分かりました。可愛いワラビーも姿を見せてくれます。

ニコール・キッドマンがとても綺麗なのですが、独特の話し方や、映画のテンポが気になって仕方なくて、なかなか作品に入り込めませんでした。牛追いのドローヴァーが西部劇風の帽子をかぶって登場し、ん?イーストウッドの子供か?みたいな喜びが。どこかで見たことがあると思いきや、『彼が2度愛したS』で格好良かったヒュー・ジャックマンです。監督は『ムーラン・ルージュ』『華麗なるギャツビー』のバズ・ラーマン監督と分かり、独特のテンポや雰囲気に納得できました。フレッチャー役のデビッド・ウェナムも、『ムーラン・ルージュ』に出てた俳優さん。オーストラリア出身の監督・俳優陣で製作したんですね。

ステキな岩山に立つキング・ジョージは、アボリジニの長老といった雰囲気です。不思議な歌とダンス?を披露し、まじないを操ったりしています。ラストで孫のナラを守る時に「俺の出番じゃ!」とは言わないけれど、颯爽と登場してくれました。少年ナラ役の子の演技も良くて、笑顔がステキです。作品中、ナラは「黒人」とか、「クリーム色」とか、呼ばれるのですが、オーストラリアにも差別があることを再認識させられました。酒場にすら入れてもらえなかったのですね。

物語は、第二次世界大戦に突入する直前から始まります。日本軍が攻めてくる様子が描かれ、ラストではダーウィンが攻撃されてしまいます。日豪が、第一次大戦では同じ連合国側にいたのに、第二次大戦で敵対関係になってしまった辺りの時代が描かれています。日本人としては、目を覆いたくなるような攻撃で、日本軍が出てくるたびに、映画の中から外に放り出されてしまう感じがしました。ただ、敵の視点から日本を見ることができる機会は少ないので、勉強になります。この映画に出てくる日本人は、日本人の話す日本語を話しているので、安心して見ていられます。ハリウッド映画で、日本人が出てきたと思ったら、「中国人じゃん、この日本語」みたいな所はありませんでした。

ニコール・キッドマンが演じる英国貴族サラ・アシュレイとドローヴァーの恋物語は、お互いバツイチ同士で結ばれますが、途中別れもあり、ラストに再会でき、いい感じで幕を閉じます。サラとナラの親子愛を育む様子、ドローヴァーが子供との関わりの中で自分の内面の向き合う様子、親が子供の巣立ち・旅立ちを見送る様子など、人間の心情描写がいいなと思いました。また、アボリジニの生活を描くことで、人種差別など考えるべきことを問題提起している様子がうかがえます。日本軍が攻め入る様子を描いたことも、監督のメッセージとして受け止めたいと思います。
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