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偽りの隣人 ある諜報員の告白のxavierのレビュー・感想・評価

4.5
聴こえてきたのは家族の笑い声、禁じられた歌、そして男の信念だった…
1985年、軍事政権による弾圧が増す韓国。海外にいた野党政治家イ・ウィシクは次期大統領選出馬のため帰国するが、国家安全政策部に逮捕されて自宅に軟禁される。ウィシクの動向を注視する諜報機関は、愛国心の強いユ・デグォンを監視チームのリーダーに選ぶ
24時間体制で監視と盗聴するデグォンだが、家族思いで国民の平和と平等を願う彼に感銘を受ける。そんな中、ウィシクとその家族に命の危険が迫り…
ストーリーはこんな感じ。

ひと言でいうと、韓国版"善き人のためのソナタ"かな。
実際に起こった事でなく、フィクションなんだけど、軍事政権下の韓国が、良く描かれている。学生運動を制圧し
反体制の人物は徹底的に排除するところなんか、その時代の韓国そのもの。
そんな中、国民の為に帰って来た政治家ウィシク。そんな彼を監視する事になる愛国心の強いデグォン。

最初はウィシクに対して、いい感情を持つどころか"国をダメにする敵"と言わんばかりの目でみているデグォン
でも次第に仲良くなっていくウィシクとデグォン。そんな中"あること"が起き…

作品の最初ら辺は、コメディ。
デグォンの部下はなんか抜けている、それはデグォンも一緒。ウィシクの娘ウンジンに恋してしまい、仕事も手につかなくなる部下や、盗聴してる事がバレかけたり、ウィシクを共産主義者に仕立てるのに、メモを仕込むのにアタフタしたり…まぁ、笑えはしないんだけどね。そんな感じでストーリーは進むんだけど、デグォンの弟が学生運動で捕まった辺りから、ガラッと変わてくる。
1番変わるのは、デグォンの心情。
"この国にとって、ウィシクは悪い人なんだろうか?"
"それとも、自分達が行っている事が悪いことなんだろうか?"
と心が揺らぎ始める。
もう、そこからの展開は……
涙、涙の大号泣!
いゃあ、こんな泣いたのは久しぶりだなぁ。

それに比べ、国家安全政策部の面々ですよ。とにかくやる事が、汚い。
デグォンに対しては、弟の逮捕で圧力をかけるわ、ウィシクに対しては、、周りに圧力をかけ、ウィシクを思い通りにするように仕掛けるわ、とことん汚い。そして、それらが上手く行かないとみるや"あんな事"までするなんて
クズ人間の所業だな。

この作品、なんと言ってもオ・ダルスが凄かった。今までは、コメディ路線が多かったのでおちゃらけた感じしか持ってなかったんだけど、今回の演技で思ったわ。シリアス路線も凄い…と
何があっても心の中に押し込め、自分の感情を出さないウィシクなのに"あるシーン"では感情が抑えきれず、泣くシーンは、大号泣!
そしてデグォンが盗聴している事がバレた時も、
"私は私の仕事をする。君は君の仕事をすればいい"とデグォンに言う。
そこも泣けたなぁ…
ただ前半のコメディ路線が残念だったかなぁ…

映画の中とはいえ、ウィシクって政治家はホントに良い政治家!
どんな辛く苦しい事があっても、国民の平等や幸せを重んじ、それがブレる事はない。
常に自分の事より、他人を思いやれる
"そんな政治家、日本にも居ればいいのに…"って思ってしまったなぁ…

"7番房の奇跡"の監督作品なので、期待はしていましたが、それ以上に良かったです。
多くの人に見てもらいたいなぁ…
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