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マ・レイニーのブラックボトムのkissenger800のレビュー・感想・評価

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ヴィオラ・デイヴィスのあらいぐまメイクに対する拭いきれない違和感と、チャドウィック・ボーズマンの闘病についてのセンチメンタルな感想は、映画そのものの本質には関係ないので触れない。って約束がワールドワイドであると思うんです(仮になければ俺が今ここで作る)。

チャドウィック・ボーズマンの演じてきた役柄っておおむね「良い人」だったと思うんですが(JBを良い人呼ばわりしていいのか。という問題はある)それ、実はデンゼル・ワシントンも同様で、デンゼルのキャリアにおいて『トレーニング・デイ』(2001)以前でそうじゃない役柄って『モ・ベター・ブルース』(1990)だけでは、と思っているんですよね。
そこでデンゼルはジャズ・トランペッターを演じていて、チャドがここでトランペット吹いてるのが偶然だとしても、ジャズなりブルースなり、「そういう音楽」が潜在的に持つ反体制エッセンスを表出する仕事をやりたくなる時期っていうのがあるんだろうなー。って言いたかった(昨今ではラッパー各位が担当しているやつですね、「俺はこんな社会に納得してねえ」)。

チャドウィック・ボーズマンの遺作となったのがこの作品なのは結果的に悪くなかったのでは。という結論なのは、いかにも大団円な「大作」ではなく、舞台劇の映画化という地味だけど滋味あふれる作品で、「これが完成したら次は何を撮ろう」ってチャドが考えていた、道半ばの思いを俺たちも容易に共有できるから。
この世界線ではないどこかで、今も意欲作を撮ってると思うのよ、ティ・チャラの人。
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