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マ・レイニーのブラックボトムのはとのレビュー・感想・評価

4.0
オーガスト・ウィルソンの戯曲の映像化。胸を抉る台詞の応酬。俳優たちの名演が更に心を揺さぶる。鳩尾に重い拳を入れられたみたいにとても苦しい。

黒人の音楽に対して『文化の盗用』という視点を持つことはいまや欠かせない価値観だと思う。傍若無人に振る舞うことで自らの権利を死守しようとする、マ・レイニー。大金を生み出す彼女でさえ白人たちの不平等な搾取からは逃れられない。レヴィーの曲を演奏する白人たちのラストシーン。不平等な社会構造を告発する戦慄のラストだ。

戯曲の映像化なので、セリフがリズミカルで、1言の重みがエグい。これは舞台で観たらさぞかし凄いだろうけど、英語苦手な私に字幕で観る機会をくれるNetflixが本当にありがたい。

マ・レイニー役のヴィオラ・ディヴィスの演技が凄かった。最高でした。そして、チャドウィック・ボーズマンの熱演にも涙。

差別に対して、その踏んでいる足をどけろ、みたいな言葉があると思うのですが、無自覚に足を踏んでいてそのことに気付かない人のなんと多いことか。私も常にどけろ!と言わないといけないし、自分が踏んでいないかも考え続けないとな、と。靴のエピソードを噛み締めています。
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