Arsenyevich

マ・レイニーのブラックボトムのArsenyevichのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

映画好きの知人に勧められて。

久々に、90分間魅入ってしまった。
スタジオという狭い空間で、レコーディングが完了するまでのたった1日の出来事。
その舞台裏で、丹念に描かれる人種問題、アメリカの歴史の闇。
綯い交ぜになったそれぞれの想い達が、ぶつかり合い、言葉として、音楽として、時に涙として響き合う。

地下室のリハ中に神に呼びかける演奏者たちのシーンは、舞台演出を見ているかのような迫真の演技の応酬。
マ・レイニーの傲慢さも、レヴィの鼻の付く桁外れの自信も、自分自身を守り抜くための信念に過ぎない。
どれだけ自分が甘えた世界にいるのかと自問してしまう。

演奏者を見つめ続ける白人達の目線も、印象的。踏み続けられるレヴィの革靴も、象徴的なラストシーンも、今も終わりなく続く人種差別の葛藤と、彼らの信念を搾取し続ける金儲け主義の連鎖を予兆していて、自分がこちら側に加担していたらと思うと、何とも言えない気持ちになる。
Arsenyevich

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