アネモネ

マ・レイニーのブラックボトムのアネモネのレビュー・感想・評価

4.5
ずっと観たかった映画だけど配信だからなぁ的な感じでいましたが、会話劇が好きな私には衝撃で、
こんなにも気持ちが揺さぶられる作品だとは思わず、配信だけど感想を書かずにはいられませんでした。
もちろんチャドウィック・ボーズマンの遺作と言うのもあるんだけど、痩せた彼から漂う切なくも悲痛な心の叫びは作品に重みを持たせ、名演なんて軽く言えないくらい観ている観客が苦しくなります。
そこに重なるビオラ・デイビスの存在感とこれまでの彼女の人生。
歌い続けなければならないヒット曲。
そして登場人物みんなの言葉からこぼれ落ちるそれぞれの現実。
こんなにもさりげない台詞が響く会話劇はなかなか無いと思いました。
一人一人の人生がふとした出来事でポロポロと言葉としてこぼれ落ちる。
こんなに重くてたわいもない会話と言い争いはない!
それがたまたま白人のスタジオでたまたまそれぞれの夢や絶望や不満が重なって、たまたま起きた事件かもしれません。
けど、この悲しい事件はたまたまなんかじゃないとわかるから、ラストの現実に
私は無表情のまま涙がこぼれ落ちるのでした。
みんな、なんでこんなに苦しまなきゃいけないのかともがいていただろうし、生きたかっただろうと思う。

どうしてこんな出来事は起こってしまったのか。
街の片隅で起こった出来事なんかじゃない。
レヴィーもマ・レイニーもバンドメンバーも、みんなただ必死に生きてきただけなのに。

観て良かったです。
アネモネ

アネモネ