kkkのk太郎

僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッションのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

ヒーローを目指す少年、緑谷出久の成長と活躍を描いた青春アクションテレビアニメ『僕のヒーローアカデミア』シリーズの、劇場版第3作。

世界同時無差別テロを画策する思想団体〈ヒューマライズ〉壊滅のために結成された世界選抜ヒーローチームに加わることとなった雄英高校ヒーロー科の生徒たち。
デクはエンデヴァーの指揮の下、爆豪、轟と共に「オセオン」という国家でミッションに従事するのだが、運び屋の少年ロディとの出会いにより事態は思わぬ方向へと転がってゆく…。

◯キャスト
ホークス…中村悠一。
轟焦凍…梶裕貴。

今作のゲストキャラクターである、オセオンで運び屋として生計を立てる少年ロディ・ソウルの声を演じるのは『銀魂』シリーズや『キングダム』の吉沢亮。

テレビアニメはほぼ未見。劇場版前2作も未鑑賞。ただ、原作は本作封切り時点の最新刊である31巻までは読了しています。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020)や『劇場版 呪術廻戦 0』(2021)など、近い時期に公開されたジャンプの同僚たちの映画が桁違いの大ヒットを飛ばすなか、まあまあの興行成績に終わってしまいイマイチ存在感を発揮できなかった本作。
『鬼滅』や『呪術』が原作に沿った内容だったのに対して、本作の内容は原作にはないオリジナルエピソード。
この作品だって決してアニメーションとしてのクオリティが低いわけではなかったのだが、結果としてライバルたちに大きく水をあけられてしまったのは、やはり今の観客はよく知らないものよりは知っているものを求める、ということなのだろう。
お金を払う以上、確実に楽しめるという安心感が欲しい。そうなってくると、内容のわからないオリジナルエピソードはどうしても不利になってくる。なぜ最近はオリジナルの映画が少なくなり、フランチャイズ映画ばかりが制作されているのか。「ヒロアカ」「鬼滅」「呪術」の映画を比較することで、その理由が透けて見えたような気がした。

ちょっと脱線してしまった💦
本作は原作でいうところの26巻、「冬のインターン編」と「超常解放戦線編」の間に位置するお話。
この辺からヒロアカは、地獄のようにシリアスでヘビーな方向にどんどん突き進んでいく訳なのだが、この映画に関してはそういう暗さは控えめになっており、よく言えば伝統的な、悪く言えば保守的で平凡な少年漫画的ストーリーが展開される。

まるで途中から始まったかのような唐突さで映画は幕を開ける。冒頭部分を見逃してしまったのか、エピローグはテレビアニメで描いたのか、そう勘違いしてしまうほどの急発進。
丁寧さには欠けるかもしれないが、退屈なセットアップをすっ飛ばしていきなり山場からスタートするという思い切りの良さは美点と言って良いでしょう✨

ヒロアカらしいアクション満載の映画なのだが、そのアクションの作画がとにかくよく出来ているっ!
例えば序盤でロディが見せるパルクールアクション。滑らかかつダイナミックな動きが非常に気持ち良く、これぞジャパニメーションだと誇りたくなるほどの高揚感を与えてくれた。
『NARUTO』っぽさを強く感じるバトルシーンも見応えたっぷり。てっきり西尾鉄也さんがメインアニメーターとして参加していると思っていたのだが、本作には不参加だった。
作画監督は西尾さんじゃなく、東映アニメーションの仕事で知られる馬越嘉彦さん。ケレン味のあるダイナミックなアクションを得意とするアニメーターである馬越さんの本領が遺憾無く発揮されている今作のアニメーション、まさに眼福と言った具合である😋

ゲストキャラクターのロディも良い。もう1人の主役と言って良いほど出番の多いキャラであり、最初から最後まで彼を中心に物語は進む。
お馴染みのメインキャラの中に1人だけオリジナルキャラが混じるというのは得てして異物感を生む。しかし、今作のロディはそのバックボーンの暗さがいかにもヒロアカらしく、また厭世的でありながらも兄弟想いなその性格には好感が持てるため、デクたちの中に混ざっても違和感はない。
人生に疲弊する彼がデクとの出会いにより成長し、再び夢に向かって歩むようになるその過程はベタだがなかなかに感動的。クライマックスの彼の頑張りに、ちょっと涙腺が緩んでしまったのはここだけの内緒。
声優を務めた吉沢亮も見事っ👏本職の声優に全く引けをとっていない。アニメっぽい声ではないので声優じゃないことには気付いたのだが、いやまさか吉沢亮だとは思わなかった…。これだけアフレコが上手かったら、普通に声優を本業にしても食っていけますっ!

アクションやキャラクターは概ね良かったのだが、物語的にはちょっと無理がある。世界同時多発テロを画策する宗教団体、それを阻止するために世界選抜ヒーローチームを結成した、と。そこまでは良いとして。
いくらなんでも、世界選抜チームに日本勢多すぎませんっ!?ほとんどがデクの知り合いじゃあないですか。
大体、そんなヤベー組織を相手にするのにインターン生がバリバリ前に出て活動するって…。ヒーローの世界的人材不足は深刻である。
そりゃテレビアニメの映画化なんだからお馴染みのキャラクターを登場させない訳にはいかないのはわかる。わかるけどさ、なんで現地のヒーローよりも日本のヒーローの方が数が多いんだよっ!おかしいだろっ!!自国の件は自国でなんとかしろっ!!
日本は超常解放戦線の奴らがウヨウヨしていてヤバいんだから、他国の事情にヒーロー派遣しとる場合じゃないと思うんですけど。

クライマックスの爆弾解除キーもさぁ。なんで中央集権型なんだよ💦そんなよくわかんないシステムにしてるから、キーひとつでテロが失敗するんだよ。リスク分散は基本でしょうに…。

また、敵の親玉フレクト・ターンに面白みがないのでラストバトルがまるで盛り上がらないのも大きな問題。「反射」能力はどうしてもバトルが単調になりがち。その能力を破る方法がパワーでゴリ押すというものだったことも、展開の単調さに拍車をかけている。
そもそもこいつの動機がよくわからん。「反射の能力のせいで親からも見放され友達も出来ず恋人とも別れた。あーもうやってられへん!!世界壊すっ!」っておいっ!色々アグレッシブすぎるだろっ!?
大体「反射能力が愛すらも跳ね返してしまう」とか言ってたけどそれってどういうことなの?上手いこと言ったつもりかも知れないが、意味不明である。
敵の首魁に魅力が無いというのは、少年漫画アニメとして大きな欠点。せめてデザインがカッコ良ければねぇ…。

アニメーションの動きは大変見応えがあったものの、お話の平凡さと設定の無理矢理さは受け入れがたい。
これなら無理にオリジナル脚本を用意せず、「超常解放戦線編」をそのまま映画化した方が良かったかもね。
kkkのk太郎

kkkのk太郎