カポERROR

ムカチノカチカのカポERRORのレビュー・感想・評価

ムカチノカチカ(2020年製作の映画)
3.8
フォロワーさんのレビューで知った本作。
実に素晴らしいショートフィルムだった。
映像や楽曲のクオリティは、完成されたPVのそれだ。
そしてそれに輪をかけて、僅か10分の尺で構成力が秀逸。
起承転結…正にお手本のような作品である。
最後にはちゃんとホッコリする。
心温まる10分に癒されたい方は、是非YouTubeでご視聴頂きたい。
以下URLをチェキラദ്ദി˶ー̀֊ー́ )✧

https://youtu.be/Or8fS77PyFQ?si=TqQsou7VHGJQ5mUo

✤✤✤

以下、ちょっと脱線するが、本作を観て私が思ったことを書き綴りたい。
決して、本作品のプロットやコンセプトを批判する意図はないのであしからず。
世間の風潮に対して、私が勝手に感じていることを書くだけなので、興味のない方はスルー頂きたい。

まずは営業管理職の私の視点から本作に対し思ったこと。
本作の主人公。
そもそも彼のコミュ力や後輩を思いやる様は、営業一筋30年の私からすると、サラリーマンとしてポンコツどころか全くもって有能だ。
むしろ、プレゼン当日まで、部下の資料をチェックすらしようとしない上司の方が断然ポンコツ。
そんな会社(部署)では、「何が楽しくて働いてるのか分からない」なんて感情を抱くのは当たり前だし、辞めて正解である。
つまり、管理職の私の目線で感じた一つは、組織論やマネージメント論の方。
社の貴重な人材である部下を、どのように大切に育成し、モチベーションアップ・スキルアップ・キャリアアップさせるのかが極めて重要なのだ。
さもないと、深刻な人材不足の中、仕事に興味を失った貴重な人的リソースが、皆、いとも簡単に人差し指一本立てて『ビズ〇ーチ』してしまう。
部下に明確な目標を与え、それをクリアすることで得られる達成感をモチベーションに転化する。
それを繰り返しつつ、少しずつミッションの難易度を上げていく。
現場のOJTとて、昔のように「俺の背中を見て覚えろ」なんて教育はもはや通用しない。
ましてや、部下が心血注いで作った資料をチェックも校正もせず、あろうことか本番ではそれを使わずにプレゼンする等と吐き捨てるような管理職のいる職場は、今の時代、離職ラッシュの餌食になることは必然なのだ。
止めどなく流出する人的リソースを引き止めることが、如何に難儀なミッションなのかを、どうか多くの方に御理解頂きたい…そんな事を考えてしまった。

次に一社会人の視点から本作を観て思ったこと。
残業中、明かりの消えた社内で主人公がこう思う。
「何が楽しくて働いてるのか、俺だって分からない。労働は労働だ。楽しさを求めるものじゃない。そう自分に言い聞かせている。」
果たしてこの考え方は間違っているのだろうか。
私はずっとその考えを大切に心に抱いて、今の会社に30年以上従属してきた。
パワハラやモラハラも受けてきたし、鬱で長期離脱も余儀なくされたが、それでも、その考えは尊く崇高なマインドだと私自身今もずっと思っているし、その想いを持って仕事に取り組むことこそが矜恃だとも思っている。
奇しくも、昔テレビで細木数子女史が相談者に同じことを言っていたのを思い出した。
世の中の万人が、楽しいことだけをやり、誰もがやりたい仕事にだけ就いてしまったら…この世界は絶対に回らない。
誰が汚物を掃除する?
誰が生き物を殺める?
誰が悪臭放つ廃棄物を回収する?
誰がクレーマーから苦情を聞く?
誰が命の危険に晒されるリスクの高い作業をする?

好きで楽しい仕事に就いて人の役に立つのは確かに素晴らしいことだが、好きでもなく楽しくもない仕事を地道にストイックに続けて社会や人の役に立つことも素晴らしいことではないか。
昨今、前者だけを殊更にフィーチャーするような世の中の風潮。
違和感を覚えるのは、私がオッサンだからなのだろうか。
好きなことや楽しいことや金儲けが出来た者こそが勝ち組…メディアのそういう印象操作が、雇用や社会構造を蝕んでいるのではないかと危惧している。
楽しくもない仕事にこそ、意味や意義、達成感ややりがいを、各々が見つけて誇りを持って取り組むマインドが大切だと、私は思う。

✤✤✤

あれこれ書いたが、結論はこうだ。
序盤の主人公に告ぐ。
『主人公君、後輩連れてうちの会社に来ないか!コーヒー奢るぞ!』

追伸)
色々書いていたら『PERFECT DAYS』観たくなった。
来週観に行こうっと(ง˘ω˘)ว
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