MasaichiYaguchi

ライフ・ウィズ・ミュージックのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
ステージで素顔を見せない“顔なきポップスター”
であるシンガーソングライターのSiaが初監督&脚本を担当した本作は、自身の半生を投影させて描いたドラマと、MVのようなカラフルでポップな音楽シーンが交互に展開され、その斬新な語り口による映像が最後まで感性を刺激する。
自閉症のミュージックは周りの人々に助けられながら祖母と暮らしていたが、或る日、その祖母が急死してしまう。
そこでミュージックの世話をする肉親として呼ばれたのが、アルコール依存症のリハビリプログラムを受けながら孤独な日々を送る姉のズー。
ただ、この姉妹は今まで疎遠であり、自閉症の上、感受性豊かで周囲の変化に敏感な妹との生活は歯車が噛み合わずギクシャクしてしまう。
そんな姉妹に対しアパートの隣人エボが優しく手を差し伸べ、少しずつズー、ミュージック、エボを中心に何とか日常が回っていくようになっていく。
この作品では自閉症のミュージックだけでなく、登場する人々が“病気”や“問題”を何かしら抱えていて葛藤したり、悩んだりしている。
でも、そんな彼らだが、ミュージックや彼女の世話で大変なズーに何らかの手助けをしようとしてくれる。
その無償の優しさが重い題材を取り上げているにも拘わらず、本作を温もりのあるものにしている。
更に、それを加速してポップに彩るのが、ミュージックの頭の中に広がるカラフルな世界を表現した幻想的な音楽シーン。
この音楽シーンでは、Siaが書き下ろした楽曲の数々に乗せてキャストがダンスと歌唱を披露していて、その技量の高さに圧倒されてしまいます。