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BLUE/ブルーのmegurosのネタバレレビュー・内容・結末

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

勝てないボクサー瓜田は挑戦者が立つ青コーナーを象徴する男。才能はなくとも誰よりもボクシングを愛し、引退してリングから離れても職場で自然にステップを踏む。教え子には対戦相手の分析ノートを届けて、試合をこっそり覗きにもいく。例え勝てなくても愛し続けること(小川の結婚相手であり、高校の同級生でも千佳を含めて)、挑み続けることの尊さがそこにはある。

ただ、日本チャンピオンにもなる小川を巡っては”挑戦”を続けることが単純に礼讃されるものでもないことが見えてくる。パンチドランカーの症状が次第に重くなってくる中で、今までのように挑み続けることにもまた疑問符が付けられる。その描写はさながらホラー映画で、これまでとは違った場所を選ぶこともまた挑戦だったのではないかと思わざるを得ない。

※劇中「はじめの一歩」の話が出てくる。途中で読まなくなってしまったため推移は追えていないが、パンチドランカーの症状が見られるのであればやはり引退しか展開はなかったのではないか。セコンドも実は修行でカムバックを描くのでは?という憶測もあるようだが、復帰して再び試合に臨むことを美談としては描けないのではないか?

映画では柄本時生演じる楢崎を含めて3人のキャラクターの成長と挫折とさらにその先を描かれるため、テーマの掘り下げが少し散漫になってしまった印象。もっと2人にフォーカスして描いても良かったように一瞬思ったが、楢崎抜きでは全体が暗くなりすぎるという判断もきっとあったのだろう。監督自身がボクシング経験者で思い入れも強かったということだが、それが逆に劇伴の付け方、演出にベタなところを生んでいたようにも感じた(気のせいかもしれないが)。総じて、単純に勝つことが全てではなくなってしまったこの世界において、ボクシング映画はどうあるべきなのか?その難しさを感じた。
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