うみぼうず

裏ゾッキのうみぼうずのレビュー・感想・評価

裏ゾッキ(2021年製作の映画)
3.5
蒲郡駅前には毎日法螺貝を吹く人がいるという。

前から観たかった『ゾッキ』。鑑賞前に観てよかった。簡単に言うと制作の裏側に密着したドキュメンタリーだけど、蒲郡市民の町興し×監督3人の創作性×コロナ禍でのエンタメのあり方 がまとまっていて、ゾッキという映画の作り手の想いがめちゃくちゃ伝わってくる。

人口8万人の蒲郡は映画館がない町で、誘致から始まり監督スタッフの出迎え、様々なキャストのサポートなどなど、蒲郡市民の頑張りがすごい。スタッフさんへの弁当やケータリングも蒲郡の飲食店が毎食手作り、弁当などに全て蒲郡市民の手書きのメッセージ付き、マスコミ対策なども蒲郡市民のボランティア。市長も何度も登場、ファンキーだね。
もちろん創作は監督や俳優が担う部分だが、山田孝之さんが言うように蒲郡市民の協力なしでは成り立ちづらいのは間違いないのでは。

そうした中で斎藤工・竹中直人・山田孝之がそれぞれ監督として演出を行っていく。『ゾッキ』ではコウテイの九条ジョーが存在感持っていったというレビューを見るが、初演技挑戦で役への入り方や感受性含めてすごいなと思う。斎藤工も嫉妬する才能で、これから俳優活動でも成功していきそう(コウテイの漫才はともかく…)。
ピエール瀧が『ゾッキ』で復帰したことなども知らなかったのでそうしたことも含めて裏側や各監督の想いを観れるいいドキュメンタリーだと思う。あとは竹中直人さん斎藤工さんめちゃくちゃオシャレ。

後半はコロナによる映画の存在意義を問うていきながら、緊急事態宣言での上映延期など次から次へと湧いてくる問題への対応に。ここでも蒲郡市民や蒲郡市役所が獅子奮迅の働き、市民会館で映画上映したり、信用金庫の会議室?を解放して市民に観ていただくようにしたり。まさに涙ぐましい努力。これから映画で町興しをする自治体の指針になりそう。

ただこれだけ町興しして作る作品が『ゾッキ』というのも非常におもしろい。『ゾッキ』の原作は未読ではあるが、なかなかシュールな作品のようだということは このドキュメンタリーを観たことでなんとなくは理解できた。『ゾッキ』本編のレビューは「意味不明」的な内容もいくつかあって、蒲郡市民が先行上映で観た時にどんな感想を持ったのか…。
ただ間違いなく裏から観た方が本編も楽しめそうだしますます楽しみになりました!
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