冒頭に母親が息子に暴力を振るっている場面が登場する。激しく壁に打ちつけられた息子はそのまま動かなくなる。名前は「石橋ユウ」。その後に同じ「石橋ユウ」という名前の息子を持つ3人の母の物語が描かれていく。観る側としては、どうしても冒頭の「石橋ユウ」を3人の母のうちの誰かの息子と考えてしまう、そのような仕掛けに作品はなっている。3人の母を演じるのは、菅野美穂、高畑充希、尾野真千子。興味深いのは尾野真千子演ずるリッチなファミリーの母親だったが、物語を締めるのは、フリーライターしながら息子を育てる菅野美穂のようだ。3人の母が物語的に交わることはないので、作品はやや消化不良な感じもする。原作は未読なので、これが物語的にはいいのか悪いのか判断はつきかねるが。瀬々敬久監督の作品としては、やや物足りなさも感じた。
