まーしー

明日の食卓のまーしーのレビュー・感想・評価

明日の食卓(2021年製作の映画)
4.5
【家庭①】神奈川在住の石橋家。夫はバツイチの遊び人。その夫と程よい距離感を保ちながら、趣味で育児日記のブログを書くフリーライターの妻。演じるのは菅野美穂。

【家庭②】静岡在住の石橋家。夫はマザコンのお坊ちゃま。その夫の実家の隣に家を建て、上流階級の生活を送る専業主婦。演じるのは尾野真千子。

【家庭③】大阪在住の石橋家。コンビニとクリーニング工場で仕事を掛け持ちしながら生計を立てるシングルマザー。演じるのは高畑充希。

この3つの家庭に共通しているのは、「10歳のイシバシユウ」という子どもを持つこと。そして、育児に関して夫を頼りにできないこと。
その結果、母である3人の女性たちが、困難を迎える度に矢面に立たされる。

「母は強し」というが、まさにその言葉を象徴したかのような作品。
ユウと友達のトラブル、ユウと弟のケンカなど、子どもにまつわる全ての問題が母親の身に降りかかってくる。そこに、仕事と家庭の両立や嫁姑問題、ママ友との関係といった大人の事情も加わる。
ストレスや戸惑い、やり場のない思いを一人で抱える母は強く、そして逞しい。一方で、時には脆くもある。本作では、そのような母親像が三者三様の形で描かれている。

菅野美穂、尾野真千子、高畑充希という演技派女優3人が主演という豪華さ。
また、出演時間が1分ほどの場面に大島優子をキャスティングする贅沢さ。
ストーリーやテーマ性に加え、キャストの演技も素晴らしい。

ちなみに、本作は、母親が子どもの首を絞めるシーンから始まる。
前述した3つの家庭の誰が引き起こしたのか、注目しながら観ていただきたい。いずれの家庭も、いつ虐待が起こってもおかしくない。
いかに育児が大変か、その育児を女性任せにすることがいかに罪深いか、この作品から学ぶところは多いと思った。