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心の傷を癒すということ《劇場版》の821のレビュー・感想・評価

4.5
とても良い作品でした。めちゃ泣いた。ずっと心に残る1作になりました。

1995年阪神淡路大震災。私はまさに「阪神間」育ちで、小中高はずっと神戸で過ごしてきたのですが、震災後に神戸に越してきたため被災していません。
でも、被災地で学生時代を過ごしてきたので周りの友人たちは(当時幼かったといえど)被災していたし、毎年1/17には学校で犠牲となった方々の追悼をして。それでも、少しどこかに他人事感のある、微妙な距離感で生きてきたんだと思います。
本作を見て、自分は震災に真摯に向き合った事がなかったと強く思い知らされました。
神戸は街も人も傷ついたけど、それでもお互いを支え合って、立ち上がって復興して、そうやって私の大好きな神戸の街になっていたんだなと…。
神戸の劇場で見たので、ホールには感想コメントがたくさん寄せられていました。その中には「今でも震災の記憶から抜け出せていない被災者です」というコメントや、火災で甚大な被害が出た長田区の方のコメントも。二十数年経った今でも、爪痕は残るし、人が負った傷は簡単に癒えるものではない。それでも支え合って、人は毎日を生きてゆく。作中の避難所で、みんなが笑い合っているあのシーンを思い出しました。

本作は神大病院で精神科医として働き、「心のケア」の開拓者となった実在の先生をモデルにした話。あまりにも大きな災害に際して、前例のない事態に面し、誰もが右往左往していた。その中で被災者、避難者の心のケアをすすめていった安先生。その真摯で、温かく直向きな姿勢に心動かされ、目頭がとっても熱くなりました。
とにかく柄本佑が上手いし、作品自体のテーマがとても明確に打ち出されているので(アオリにも使われている「誰もひとりぼっちにさせへん」)、そのテーマ性を作品を通して感じつつ、最後に改めて納得させられました。

あと、神戸の街並みはじめ親しみのある風景が多く映し出されているのが個人的に刺さった部分です。この作品を神戸で見られて本当に良かった。見終わった後は国際会館前の通り経由で駅に向かいました。地味に、安先生の高校の制服が大阪星光だったりするところも懐かしみが…。

本当にすごくいい作品だった。まだ上映してる劇場はあるようなので、お時間が有ればぜひ足を運んでみてください。

奇しくも今日は3.11から十年が経つ日で。大変な時にこそ、お互いを支え合える社会でありたいと、強く思いました。
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