ボギーパパ

ハウス・オブ・グッチのボギーパパのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
4.4
2022-09 TJ横浜

巨匠リドリー・スコット監督最新作。それだけで観なければならないという意味不明な使命感に駆られて鑑賞。

正直な話、レディー・ガガ、アダム・ドライバーはその暑苦しさ(失礼)から実力は認めているものの、そんなに好きな役者ではない。ただただ巨匠がどう撮ったのか、何を撮ったのかを観たいだけだ。

本作は「呪い」の物語。呪怨、呪縛の対象が家族である恐ろしくも実は普遍的な物語。家族という個人の意志では選べない集団は、この上なく美しくも描かれるし、とてつもなく醜く描かれる。どちらかといえば醜く描かれる事が多かろう。「人間の業」の深さ故不可避であり、永遠のテーマ。

そして唯一家族を「選べる」のが「結婚」!
この二つが絡み合い今作の軸をなす。監督の過去作では類似テーマを扱った『ゲティ家の身代金』があったが、かなりの部分で本作と通じている部分があると思えた。やはりその父権的「家族」の呪縛と、家業から産み出される「財」からの呪縛が、人を雁字搦めにしている事への批判精神の表れだろう。

全体にスピード感がありテンポも良く、ともすると置いていかれそうになる展開。必死についていこうとしがみついて観ていたせいか、かなり疲れたが、時折挿入される70〜80年代ポップスをはじめとする音楽が、時にはアレンジを加えられて刺激となる。監督の作品にしてはこの音楽の使い方、選曲はこれまでとは違い驚きもあった。Blondie「Heart of Glass」、ジョージ・マイケル「Faith」は特に印象的。

また役者陣の演技に関しては本作全般に魅せられた。まずパトリツィア=レディー・ガガ。したたかさと野望を湛えた目の演技が凄い!メイクも相まって凄い表現でありました。またそのしたたかさを隠す表情(もしかすると真の愛情かも、無いわけでは無いだろうから(^^))との対比があり落差をつけてきた。あれだけ派手な顔立ちだから余計そこに目がいく。

そしてマウリッツォ=アダム・ドライバー。珍しく口角上げたお人好し演技に好が持てたが、その後の変転ぶりも好演。

その他、アル・パチーノ、ジャレット・レトら、とまぁよくこれだけ暑苦しい(失礼)人たち集めて、暑苦しく演出したものだが、素晴らしいとしか言いようがない。そんな中、演技は暑苦しいものの枯れた感じを出しまくったジェレミー・アイアンズも良かった。

トム・フォードやグッチ一族から相当の批判があったと聞きますが、そりゃそうだろうと思いますよ。あれだけの表現なら・・・とはいえ本当はもっと酷かったりする事もあり得るんだろうなぁ「骨肉の争い」だものなどと想像してしまいました。とにかく家族という組織の嫌なところを徹底的に見せられたので、バランス取るために来週は『CODA あいのうた』でも観に行って心を浄化したいと思います。

スピード感というか展開が早いので劇場鑑賞しないと辛いかも、、、お勧めいたします(^^)
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