るるびっち

ハウス・オブ・グッチのるるびっちのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
3.8
「グッチ」という名前にまつわる話。
富の象徴であり、名門であり、呪われた名前である。
劇中で偽ブランド、関西弁で言うパチモンが紹介される。
グッチに嫁いだ女性が本物かパチモンか。
偽ブランドに寛容だった一族の伯父さんは、パチモン花嫁にも寛容だった。
そもそもブランドと言いながら貴族でない成金グッチ自体が、本物かパチモンかという話でもある。
英国人リドリー・スコットの視線は冷ややかで、ブランドぶってるけど所詮成り上がりのパチモンだろうと野卑に描いている気がする。
成り上がりの花嫁を描いているようで、実はグッチ家自体が成り上がりだと指摘しているのだ。
だからこそ、彼女の最後の台詞に皮肉がこもっている。
「グッチ夫人と呼びなさい」

何だかレディー・ガガを起用したのも、実力だけではない意地悪なクソジジィの視点を感じる。
友近にしか見えんというレビューをどなたかが書いていたと思うが、確かにいかがわしさプンプンで友近ぽい。下半身のボリュームを見てると、渡辺直美にも見える。
更に後半、ド派手に動くブランドになった姿はアパホテルの社長もビックリだ!

マクドナルド乗っ取りの顛末を描いた『ファウンダー』。
FOXニュースのスキャンダルを描いた『スキャンダル』。
そして血塗られた権力争いを描いた本作。
アメリカ映画は実名で暴露ネタを描くが、大抵無許可でやっている。
だから、本作もグッチは怒っているようだ。
裁判沙汰になっても、儲かれば良いという考えなのだろう。
訴えられれば、むしろ宣伝になる。
邦画は、無許可・実名で暴露なんか中々描けない。
実録物の『仁義なき戦い』でも、モデルの暴力団の名前と組名は少し変えている。暴力団にさえ気を遣っているのか?
まして大企業や政治家や団体には忖度して、暴露映画を作れないのではないか。そもそも勇気がない。
フィクションですら、番組最後に「この作品はフィクションで、実在の個人や団体とは関係ありません」と断わりが入る。
配慮ではなく、クレームを恐れているのだ。
邦画もそんな弱腰ではなく、暴露映画を作って腐敗を糾弾して欲しい。
日本人は空気を読みすぎる。
それは美徳ではなく、へつらいに過ぎない。
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