過去のピクサー映画でいえば『バグズライフ』『カーズ』に傾向は近い。宇宙活劇としてクレバーな面白味を出すことに成功していたとは言えないが、ヘタにウェルメイドを意識した近年のピクサー作に比べれば、こちらの方が好感は持てる。宇宙映画として魅せる宇宙のショット一つ一つは、実写のSF映画と堂々と肩を並べられるレベルにクオリティが高く、ピクサーのアニメーションの底力にまたもや圧倒されてしまった。宇宙空間に飛び出そうとする際の興奮と恐怖入り混じるさまを登場人物の足元で体感的に表せるのは流石。
ただ、本作のコンセプトが「少年少女が玩具を欲するまでに夢中になった1990年代のSF映画」を目指した以上、映画のメカニズムじたいにも関わりうる時間概念のあっさりした処理はあまりにも文脈を無視しているし、そのサクサク感の割にラストで唐突にアメコミ映画を踏襲するわで…。トイストーリー世界でのバズライトイヤー映画なら既にカートゥーン映画『帝王ザーグを倒せ！』があるわけで…再三言うが、実在した宇宙飛行士としてのライトイヤーを描いた方がよっぽど理に適っていたように思われる。そして、その私的な願望が本作で覆されることはなかったのが残念でならない。
