るるびっち

バズ・ライトイヤーのるるびっちのレビュー・感想・評価

バズ・ライトイヤー(2022年製作の映画)
4.1
モスバーガーに「モスの菜摘」という商品がある。
バンズの代わりに、レタスで肉を挟んでいる。
こんなのハンバーガーじゃないという人は、本作を納得できないかも知れない。
これはガチガチに凝り固まった頭の固い過去の自分を、どう変えられるかという話である。

劇中、肉でパンを挟んだサンドイッチが出る。
サンドイッチの変化は時間経過の描写に見えるが、実はここにテーマがある。
パンで肉を挟むのがサンドイッチだという固定概念を、どう崩して新しい認識に順応するかなのだ。

主人公のバズは新人が嫌いだ。
新人は足を引っ張るので、一人の方が効率的だから。
だがそれは表向きの理由だ。
本当は過去の自分を見るようで、惨めになるからだろう。
元々成績の悪かったバズは、相棒に見出されて成長した。

彼にとっては、スペース・レンジャーとしてミッションを成功させる事が全てであり、人生であり、唯一意味のあることなのだ。
それ以外は無意味だ。
パンで肉を挟むサンドイッチには意味があるが、肉でパンを挟むそれには意味がない。

だから彼は自分のミスにこだわる。自分のミスで招いた事態を収束するために、何度も何度もしつこく挑戦を繰り返す。
そのしつこさが結局、悪を生み出してしまう。
人の話を聞かない頑固爺状態なのだ。

そんなバズの仲間になるのがポンコツ集団。ポンコツの彼らはミスを繰り返す。
そのミスが許せるようになった時、初めてバズは肉で挟んだサンドイッチを心から味わうことができるだろう。

コロナのせいで追試を受けられず留年したと、東大生が大学を訴えた。
この学生はきっとモスの菜摘を食べないだろうし、本作を理解しないだろう。
幾らこうあるべきだと思っても、現実はそうはならない。
その時、受け入れて前へ進むか、迷惑な頑固爺になるか。
「意味のある人生とは何か」それを勝手に決め込むのは傲慢である。
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