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モーリタニアン 黒塗りの記録のniのレビュー・感想・評価

5.0
文句なしの★5.0。予想通りの傑作。
ジョディフォスターの迫真の演技を大きなスクリーンで見れたのもとても良かった、、
ある程度9.11の後のアメリカが国家として行ったことと(NetflixのThe turning point: 9.11 and the War on terrorってミニシリーズのドキュメンタリーを見たけど、フィルマークス上になくて、追加の依頼をしたけど未だに追加されていなくて残念…)、グアンタナモ収容所の劣悪さについては予習したつもりだったけれど、大きなスクリーンで再現映像のようなものを観るとやはりショックが大きかった。多くの他の映像作品で観るような、キラキラとしたアメリカはそこにはない。実際のモハメドゥさんもLow and orderシリーズが好きだったそう。アメリカが好きだっただけに彼のショックも大きかっただろうと想像します。この映画を通して、法の支配を信じるようになったとジョディが何かのインタビューで語ってたのがとても印象的だった。無法地帯と成してたグアンタナモだけど、結局は法の力が勝ったわけで。法律の持つ力はとても大きなものだと思う。アメリカが9.11の後に容疑者たちに行ったことは本当に非人道的なのに、そこまで有名になっていないことに恐怖を覚える。私も実際、今年の9月に、同時多発テロに関心を持って、いろいろ調べるまで知らなかった。国際条約に違反する拷問、裁判無しの長期間にわたる拘束。世界一の大国、自由の象徴とも言えるアメリカがそんなことをしていた。グアンタナモに収容されていた人たちは、絶対に同じ人間として扱われていなかった。人に対してだったら絶対にあんなとこは出来ないと思うから。9.11の恐怖に、アメリカが支配されていたから恐らくこんなことが起きてしまったのだと思う。恐怖は人を、国家を狂わせてしまう。恐怖に基づいた判断は、冷静になって考え直す必要があるなと感じた。
そして、本当に本当に酷い扱いを受けたのに、「アメリカを許したい。許すことが1番の復讐になる。」と語っていたモハメドゥには感動せざるにはいられなくて、裁判のシーンはすごく泣けた。しかもあんな環境にいながら英語を学んだこと、拷問されている時もスタッフのことを可哀想だと思ったと言っていた事、どこまでも前向きな人柄には本当に驚かされた。
ナンシーは最初は彼の無実を信じていなかったそうだけど、今は良き友達だと聞いて、なんというか良かった…という気持ちになった。友人がハイジャック機に乗り合わせており、友人を亡くしたスチュワートが、モハメドゥがやったことに証拠がない事、拷問を受けていることを知って、改心していく姿も忘れられない。「誰かが責任を取らなければいけないけど、誰でも良いわけではない」(確かsomeone, but not anyoneみたいな台詞があったはず…)
無実が証明された後も、彼は何年も収容され続けたこと、アメリカ政府は彼に謝罪をしていないこと。未だに事は解決したわけではないと思わされる。9.11の恐怖も勿論だけど、その後のアメリカ政府がとった行動も決して忘れてはいけないと思う。この映画がイギリス製作なこと、出版されたモハメドゥの手記も黒塗りなごとに闇を感じる。

こういう社会的な弱者の声を拾った映画は本当に偉大だなと改めて感じる。この映画を通して、9.11のあとのアメリカについて学べた人もおそらく多いと思う。やっぱり映画が大好きです。
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