まーしー

モーリタニアン 黒塗りの記録のまーしーのレビュー・感想・評価

3.0
9.11.のテロ首謀者の1人として逮捕されたモーリタニア人の黒人男性。法的根拠のないまま不当に拘禁される彼を救うため、1人の女性弁護士が立ち上がる——。

アメリカの闇社会を垣間見ることができる衝撃的な内容。
成熟した法治国家アメリカで起こったこととは思えない。
死刑執行ありきの政府、理由なき拘禁、人権を蹂躙した拷問……まるで未熟な国家を舞台にしたかのよう。
特に、拷問の内容が衝撃的。爆音、刺激的な光、水攻め、苦しい姿勢、性交の強要など、時代錯誤も甚だしい内容だった。

円熟味を増したジョディ・フォスターが人権派弁護士を好演。
テロ首謀者を弁護することは、そのテロ行為を容認するかのように捉えられかねない。だが、周囲から「テロリスト」と非難されながらも、国家の闇を白日のもとに晒そうとするジョディ・フォスターの姿からは、芯の強い女性像が伺えた。
また、拘束されたモーリタニア人がテロの首謀者か否かではなく、違法な拘禁と拷問を争点に裁判を闘う姿は、情に流されない、冷静な弁護士像として映った。

9.11.のテロがもたらしたアメリカ人の悲痛は、日本人の私には心底理解できないものだろう。
しかし、そのことを差し引いたとしても、法治国家たるアメリカが法的根拠なく約15年にわたり容疑者を拘禁した罪は重い。
本作では、まだ人間の心を忘れていない人物も描かれており、それがせめてもの救いだった。