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劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライトのambiorixのレビュー・感想・評価

4.3
まずもって疑問に思ったのが、この作品はどの程度の予備知識を持って臨むべきなのか?ということで、たとえばTVシリーズはおろか再編集版映画すら見てない状態でうっかりここまでたどり着いてしまった観客が、物語の開始時点であらかた出来上がっているキャラクターの関係性やら虚実のあわいをシームレスに行き来する独特な語り口やなんかに面食らい置いてけぼりを食らうであろうことは容易に想像できるし、でもかといってぼくのようにTVシリーズを全話走り切り再編集版映画で予習をしてきた人間からしても、本編の終盤で一度消えて戻ってきたはずのひかりが続編の冒頭でどういうわけだかまた消えたり、本編ではポジティブにとらえられていた女の子たちのあばたもえくぼ的な個性を完全に否定するようなくだり(純那ちゃんの名言引用癖など)もあったりして、どのみち困惑しきりだった。TVシリーズの続編をうたいつつもその実TVシリーズとの脈絡があんまりないわけです。
ただいずれにせよ最後まで観終えた後に残る「なんかよくわからんけどスゴいものを観てしまったな…」みたいな感じはすべての観客におそらく共通するはずで、結局のところ本作『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』というのはストーリーの筋を丹念に追いながら楽しむタイプの作品ではないんだろう。後半部、華恋の回想シーンを挟みつつ映画の最終盤までほぼノンストップで展開されるワイルドスクリーンバロックのシークェンスに顕著だけど、これってようするにヤンキー漫画なんですよね。向かい合った人物ふたりが本音や相手の不満点をぶちまけながら殴り合い、お互い力尽きては寝転んで「お前のパンチ、最高だったぜ…」かなんか言って認めあう、そこに至るまでの模様を超尖ったアヴァンギャルディッシュな演出でもって見せてくる。なのでヤンキー漫画にお話の整合性だの論理性だのを持ち出してくるほうがむしろナンセンスというか、画面に置かれたモチーフの考察や眼前に起こった現象の言語化をこころみる前にまずいったん脳みそをシャットダウンして、ほとばしり出る映像の洪水、情報量の暴力に身を委ねてみる、という風な楽しみ方をするのが一番よいのかもしれない。で、実際にそうやって観てみた結果、やっぱり「なんかよくわからんけどスゴかった」としか言いようがないのが非常に歯がゆいんだけども、ぼくはこれ、個人的に大好きで忘れられない一本になってしまいました。
(余談だけど、エンドロールがまた素晴らしいのよね。ぶっ飛びまくった展開でヘトヘトになった観客を一気に現実に連れ戻してくれる。9人ともみんな自分の進みたい道に進めたみたいでよかったよ…。)
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