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竜とそばかすの姫のRのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2021年の日本の作品。

監督は「時をかける少女」の細田守。

あらすじ

高知県の田舎町に住む女子高生すずは幼い頃に母を事故で亡くして以来、大好きだった歌が歌えなくなり、鬱屈した日々を過ごしていた。そんなある日、全世界で50億人以上が集う巨大インターネット空間「U」にベルというAs(アバター)として参加し、そこでは自然と歌が歌えるようになったすずは自ら歌った歌を通して世界中から注目される歌姫となっていく。そんな中、遂にはコンサートが開かれるが、そこで突如謎のAs「竜」が現れ、コンサートは台無しとなってしまう。そこで、すずは「竜」の正体を探るため接近を開始するが…。

みんな(なんだかんだ)大好きな細田守監督の最新作。長編オリジナル作品としてはこれでもまだ6作目…。いやぁ、作品を重ねるごとに賛否両論ありながらもどんどん注目されていきますなぁ。

そんな細田守、監督作としては個人的に「バケモノの子」辺りから「ん?」と思ってきていて、遂にはいけないと思いつつも、俺の周りでも圧倒的「否」が多かった「未来のミライ」に関してはブルーレイは買ったは良いものの、観てもいない。

そんな細田守ミーハーな俺なんだけど、今作を観た感想としては、頭ごなしに否定はするつもりはないけど…面白いか面白くないかで言えば、つまらなくはないけど(言い訳がましい笑)、面白くなかったかなぁ…。

まず、良いところから挙げるならばその圧倒的な世界観!!今作でも高知県のまさに夏映画!!という感じの自然豊かな田舎町をベースにしながらも(風景の書き込みが本作でもやっぱりすごい!!)、その主軸となる舞台は仮想空間「U」!

個人的細田守映画で1番大好きな「サマーウォーズ」でも「OZ」っていう仮想空間が出てきたけど、それを正当にアップデートしたような圧倒的なCG技術で描かれるこの仮想空間がまずはすごい。

50億人がユーザーとして利用しているっていうのも頷けるくらい、どこまでも広がるオープンワールドとそこに蠢く無数のアバター=As!「OZ」のアップデート部分としてはボディシェアリング機能が実装されており、すずが初めてワイアレスのイヤホンを付けて瞳認証から遂にAs「Bell」となって文字通り「変身」して「U」の世界の扉を開けるシーンはマジでワクワクが止まらなかった。

Asのデザインも凝っていて、なんと「アナ雪」をはじめとしたディズニー映画のキャラクターデザインを手掛けているらしいジン・キムだったり、昨年好事家たちから話題となった「ウルフ・ウォーカー」の「カートゥーン・サルーン」が参加していたり、他にも世界的に有名な建築家だったり、デザイナーがこだわり抜いたデザインの数々がやっぱものすごくて、ここら辺も生き馬の目を抜く勢いの細田守監督作だからこそ集まった凄腕たちから作られる「絢爛豪華さ」が観ていてまさに眼福だった。

そして、そんな本作の主人公すずを演じるのは世界的なシンガーソングライター中村佳穂!俺は全然その存在を知らなかったんだけど、「フジロック」出演をはじめ、数数のアーティストから注目される「天才」らしく、やっぱ観てみるとその歌声が凄い!

初めて歌い出すその瞬間から世界の時が止まったかのような息遣いと囁くようでそれでいて、胸の奥に突き刺さるようなその壮大さすら感じる歌声は、全然知らなかった俺すら息を飲むような感覚すら覚えた。

作品的にもこの「ベル」が歌う歌にはそのキャラクターとはまた別の意味での「説得力」が必要なわけだけども、看板に偽り無しというか、この人選に対しては誰も異議を唱える人は少ないんじゃないだろうか。

あと、何気に他の面々も凄くて、竜役には公開間近まで伏せられていたけど、あの佐藤健(「るろうに剣心 最終章 THE B egining」)だし、すずの通う高校の同級生たちは成田凌(「くれなずめ」)、染谷将太(「唐人街探偵 東京 MISSION」)、玉城ティナ(「AI崩壊」)といった実力派若手俳優陣、そしてすずの父親には「バケモノの子」以来の出演となる役所広司(「バイプレーヤーズ〜もしも100人の名脇役たちが映画を作ったら〜」)だし、他にもすずが所属する合唱部のおばさんたちの面々も書くのめんどくさいから省くけど森山良子(「思い出のマーニー」)だったりと、いやめちゃくちゃ豪華やないか!!

ゲスト声優以外でも宮野真守、津田健次郎、そして森川智之と…いやこっちもめっちゃ豪華やんけ!!どんだけだよ!!

個人的に注目したいのはすずの親友(というか悪友)のヒロちゃんを演じた「YOASOBI」のボーカルikraこと幾田りら!!元々その可愛らしくも透き通るような歌声は声優向きだったのかもしれないけど、その相性はまさに抜群という感じでめちゃくちゃ愛らしくも可愛らしく作品に彩りを与えている、この人選は旬の人選とはいえ大正解でこれは今後も声優のオファーがあっても全然違和感がないのでは。

という感じで世界観良し、主役良し、キャスト陣良しとハマる要素しかないわけなんだけど…やっぱお話部分が残念かなぁ…。

お話としてはベースとして監督が大好きらしいディズニーの「美女と野獣」が元ネタとしてあるわけなんだけど、今作における美女と野獣的存在である「ベル」と「竜」のそもそもの出会いのきっかけがコンサートを邪魔されたっていう以外での接触があんまりないもんだから、すずが「竜」の正体を探るほどの存在なのか疑問だし、その後の2人の関係性の構築もなんか早急というか、ちょっと薄い。

あと、「U」では「ベル」という輝かしい存在ながら、その実生活では地味というある意味二重生活を送るすずの現実世界パートもキャラクターの関係性の描きがこちらも薄くて、「時かけ」や「サマーウォーズ」で感じたような「THE青春」っぽさはあんまり感じなかったのも残念。

細田守監督らしい「全員集合」のパートもそのせいか、なんかとりあえず集まってみました。感があって、盛り上がりに欠けたかなぁ。

あとあと、「竜」の存在を巡って後半大事な要素として「児童虐待」に関する描写があるんだけど、虐待児童の苦悩を描いたシーンは切なくなったけど、こちらも作品のテーマとして扱うにはやっぱり厚みが足りなかったかなぁ。

あと、作品性とは別に今作の歌姫中村佳穂の歌ってすごい手嶌葵感ありません?そういう意味では、どうやら監督が宮崎駿批判をしたらしいけど、その本人ではないとは言え、息子の宮崎吾郎と趣向が似ているのでは?と思いたくなるw

別に監督が作品を通して伝えたいテーマは賛否両論あってそれで良いと思うんですよ。ただ、やっぱ昨今の監督作に言えることはお話に難ありってことで、初期の作品に比べるとやっぱ面白さでは下がってるって個人的には思うわけで。そういう意味では監督としての腕は間違いなくあるわけなんだから、ここは監督業に絞って脚本は別の人との共同脚本にするとかなんなら任せるとかした方が良いんじゃないかなー。

「未来のミライ」からは「時かけ」要素、今作が「サマーウォーズ」要素が多いという意味でも監督的にはネタ切れか?とも思いたくなるような出来で次作るなら「オオカミ子ども」の要素がある作品なのかな?

次は何年後かになるかはわからないけど、期待半分で待ち望もうと思います。
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