あーさん

竜とそばかすの姫のあーさんのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

とにかく、Don't think, feel !

まずは、そこから。。


音楽の評価は高いものの、ストーリーや設定の整合性に違和感を持つ声も多く、鑑賞を迷っていた。
ちょうど今作を観てきた息子から(何故かFilmarksをやっているというだけで未見の私が…)物語の矛盾点の説明をさせられる羽目になり、これは無責任なことは言えんな、と巻き込まれる形で観に行くことに。。
何人かのフォロワーさんの、多くを語らないが熱いレビューも、私の背中を押してくれた。

長文になることが予想されるので、なるべく簡潔に書く事を心がけながら、今作の注目すべき背景と感想を。

→音楽について

歌が良い!と大絶賛の声が多いが、主人公すず/Belle役の中村佳穂の奇跡的な歌声、圧倒的な歌唱力が本当に素晴らしくて、こんなsingerがいたんだ…という驚きと、今作とのマッチングがとんでもないことになっていた!
この歌を聴きに行くだけでも、今作を観る価値は十分ある、と断言してもいい。
King Gnuの常田大希率いるmillennium papadeの"U"は華のある曲で、仮想空間"U"のイメージにぴったりで、さすが!
てっきり音楽全般が常田くんかと思いきや、調べてみると、実は今作の為に集結した音楽班の存在を知る。
音楽監督の岩崎大整、スーパーヴァイザーの千陽崇之、クラシック・現代音楽の作曲家 坂東祐大、ゲーム音楽からルドヴィヒ・フォーセルの4人(+細田監督、中村佳穂)が、劇伴からベルの歌う曲まで共同制作していて、経歴を見ると最強だな、、と思った。
個人的に坂東祐大さんに関しては、東京芸大作曲科出身、ドラマ音楽"大豆田とわ子…"や 米津玄師等の楽曲に携わっていると知り、納得!
劇中では彼の率いるEmsemble Foveが最大74名で、あの世界観を奏でている。

自分の音楽好きもあり、音楽に関しては詳しく書いているけれど、元々監督は今作をミュージカルにしたかった経緯もあり、監督の各ジャンルの音楽家の目利きが、今作の肝になっているということ。これは、間違いない!

→その他、クリエイターの仕事について

細田監督は、"未来のミライ"でカンヌ映画祭に関わった時に、どうすれば海外のセンスの良い作品みたいなものができるのか?と知り合った海外のその筋の方に教えを乞い、監督なりに研究したのだとどこかに書いてあった。

まず、仮想空間ですずのAs(アバターのようなもの)となるベルのキャラクターデザインを、ディズニーのアナ雪、ラプンツェル、ベイマックス等を手掛けたジン・キム氏に依頼。
その豊かで立体的な表情は、眼の動きや唇の上げ下げの妙で、幾通りにでも変幻自在!

ベルの衣装に、スタジオ地図の伊賀大介に加えて、エデンワークスのフラワーアーティスト篠崎恵美、アンリアレイジのデザイナー森永邦彦が参加。
赤い花のドレス、キラキラしたクリスタルなドレスは、それぞれの個性が炸裂、それはそれは煌びやかなものになっていた。

そして、"U"の世界をデザインしたのが、建築家でありデザイナーのエリック・ウォン。
監督の希望で、ozの延長である事を意識したデザインを監督と共に目指したという。

更に、ベルの歌う姿は、コンテンポラリーダンサーであり振付師の康本雅子がモーションキャプチャを担当。

後は、"U"の仮想世界を表現するのに、ボディシェアリングの技術に関する研究者、次世代5Gの立役者も関わっている。

(これらの詳細は、YouTubeの公式のもので観られます)

等と長々と書いてきて、何が言いたいのかと言うと、細田監督は世界を視野に、本気を出してきた!ということ。
賛否両論ある作風の監督だが、どうしても伝えたい事を伝えるにはどうしたらいいのか?という壁を乗り越えるべく、一流のクリエイター達の助けを借りて、渾身の作品を生み出した。
この感じは、"君の名は。"で一気にメジャーに躍り出た新海誠監督を思い起こす。

映画が総合芸術である、という事を改めて思わざるを得ない。

だが、明らかに音楽・デザインに趣向を凝らし、如何に華やかに美しく見えるかを全面に出してきた作風に、戸惑ったコアな細田ファンもいるのでは、、とも思う。


→監督のメッセージと感想
(ネタバレ含む)

では、中身はどうなのか?

監督の愛してやまない"美女と野獣"の世界観、
自由で楽しい異空間でありながらそこにいる人の本当の姿が見えない為 正義の価値観が揺らぐ、という両面を持つインターネットの世界への思い、
当初から一貫して持つ、社会からこぼれ落ちてしまった人たちへの温かい眼差しとエール、、
等監督の描きたいテーマ、
更には、
高知の美しい川のある風景、
作画の美しさも手伝い、
定番の夏に成長する思春期の少年少女達の等身大の姿、親子の絆、
等誰もが経験するであろうドラマパートも重なり合って、個人的にはものすごい熱量の作品が出来上がっていると思った。

盛り込み過ぎ、、という声には多少同意だし、細かい部分の?がないではないけれど、それは大体枝葉のもので、そもそもアニメーションなんて何でもありの世界が描けるからアニメーションなのだし、と思う。(一つ気になった点を挙げるとするならば、竜の"U"での暴れる理由が今いち具体性に欠けていた、という点くらい。Uの中の人々の浮遊感、不思議さは、さて置く笑)
→圧倒的な熱量が、その細かい部分の矛盾や曖昧さを凌駕している!

サラッと一度観ただけではわからない深い読み取りが必要というか、何度も観て腑に落ちる、、そんな作品なのではないかな。
最初は、もの凄い音楽に心を持っていかれ、次にじわじわと細かいディテールがわかってくるに従って、またその奥にある深みに気づく、、というのか。

言いようのない大きな感動をもらって帰宅してから、何人かのYouTuberの方の解説を読んでいて気付いたのは、"お母さんへの想い"という視点。
"美女と野獣"がモチーフと言うと、恋愛物のイメージだけれど、それは例えであって、そのものズバリではないというのだ。
てっきり、ベルが美女で竜が野獣だと思っていたが。。
作中、私が一番好きな♪"はなればなれの君へ"という歌は、君=竜だけではなく、お母さんへの"会いたい"想いを歌った歌だったのか⁈
そこは、目から鱗!
歌がとても楽しいものだとを教えてくれた大好きなお母さんを幼くして亡くす、ということが、どれだけ辛くて悲しくて、人生に影を落とすのか、同じ経験をしていない自分には計り知れない。
けれども、すすが竜との出来事を通して、お母さんがすずを置いて溺れている子を助けに行った時の気持ちがやっと理解できて、周りの人たちの温かさにも気付き、大きく一歩を踏み出していく様子は胸がすく思いだ。
歌の効果も相まって、もう言葉にならない。。

殴ろうとする手を何度も止めて、殴らなかったケイのお父さんの描写、子ども達を庇うすずのきっぱりとした顔が好きだ。
監督の優しさが溢れている。
ジャスティンに見てほしい!
誰かを悪者にして吊し上げて叩くのではなく、気付かせて自分で改心させることの大切さ。
ケイくん達のお父さんも追い詰められていたのかもしれない、という想像力。
ネットで真偽もわからない情報を鵜呑みにして人を叩くことが常態化している今、綺麗事かもしれないけれど、そうあってほしい世界がそこにあった。

しのぶくんや、ヒロちゃん、ルカちゃん、カミシン、そしてすずのお父さん。
そして、合唱隊のおばちゃん達(後で、キャスト→森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世 を見てびっくり!皆さん、プロフェッショナル ♪)。
気付かなかっただけで、すずの周りにはたくさんの応援団がいて、ずっと守ってくれていたんだ。。
みんなで合唱する♪ラーラララは、ライブのコール&レスポンスのようであり、劇場が一体感に包まれているような気がした。

個人的には、声の部門のベストアクト賞は、ヒロちゃん役の幾田りら♪(from YOASOBI)
他にも演技の上手い人気俳優、声優を散りばめるあたり、細田監督、そつがない!

もっともっと書きたいことはあるけれど、とにかくどこを取ってもものすごい作品になっているので、絶対に観て損はなし!

少なくとも、音楽に助けられてここまで生きてきた私にとっては、心から観て良かったと思える作品だったし、どこかの片隅で閉ざされた心のまま膝を抱えて苦しむ人に、このメッセージよ届け!!と思った。



それぞれの感性で楽しんで♪
(小学4年生の甥っ子も"良かった!観た方がいい"という感想…)


*できれば、複数回観る事をお勧めしたいけれど、このご時世なので💦
私もしばらく自粛するけれど、
収まった頃にIMAXで観たい。。




♪ U ララライ
♪ 歌よ  ミチビイテ
♪ 心のそばに   キカセテ〜
♪ はなればなれの君へ  ア〜イタイ
あーさん

あーさん