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竜とそばかすの姫のsueのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
4.0
実生活の子煩悩を炸裂させた前作「未来のミライ」が大衆にそっぽを向かれてしまったのが堪えたのか、今回はきっちりファンに迎合した、サービス精神旺盛な「エンタメ」ムービーに仕上がっている印象。

内容はまさに「細田守 The BEST」
バーチャルワールドと片田舎の現実、片親の喪失と対立、画面いっぱいにうねるクジラ、歌詞に忍ばせた「Time waits for no one」etc…
そんな過去作の残像を至るところに散りばめて細田守監督が今回挑戦したのが「美女と野獣」細かいところに目を瞑れば、とても楽しくみていられるし、なんか力ずくで感動させられたような気になる。

今作の仮想空間は「サマーウォーズ」よりもっと狂騒的で浮き沈みの激しい、誹謗中傷が蔓延る暗くて怖い場所になっている。前作発表後に味わった辛酸が影響しているのだろうか。
アバター(仮面)が無いと自己表現できないネット民への怒りが物語にダイレクトに反映されているように思えた。

ファンが求めるものをトレースしながら「世界に発信すること以上に目の前の誰かに手を差し伸べることは尊い」と、宣言してみせた細田守監督の、またガラリと変えてくるであろう次回作を、少々の不安と大きな期待を抱えて待ちたい。
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